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D's Talkin' about BB
“Surfer Girl / Little Deuce

さてお次は…順でいけば【Surfer Girl】だが、先に【Little Deuce Coupe】の方を見ておく。

この2枚、【Surfer Girl】63年9月(全米7位)/【Little Deuce Coupe】63年10月(全米4位)、驚く無かれ1か月しか間がない。ほぼ同時発売でしょう、これでは。

両盤とも produced by Brian Wilson …ここでキャピトルの縛り(ハウス・プロデューサー Nick)が解かれて名実ともにビーチボーイズ・サウンドの解禁といえる。ただし【Little Deuce Coupe】は、前2作からの「持ち込み」が2曲《409》《shut down》、一ヶ月とはいえ【Surfer Girl】も前盤とすればここからも《little deuce coupe》《our car club》を持ち込んだ…都合4曲もの既発曲を入れたのだからかなり〝ヤッツケ感〟がある。

 

まず「サーフィン」を仕掛けてデビューしたBBだがキャピトルは早々に気づいたんだろうな…広いアメリカで〝サーフィンを楽しめる若者はそう多くない〟:-)

海なし州がどれだけ多い事ヨ…ならば海より陸でしょ「車」でしょと。「ホットロッド」ならば〝売れ幅〟も広がろうというもの。そこで既発盤より「車曲」をかき集めて…そこに新曲足して。このキャピトルの期待(重圧)に答えたブライアンの頑張りヨ、今にして思えば大変だったろうなと…、心中お察しいたします気分である

この拙速なリリースからしてキャピトルとしてはほとんど『売り切り御免』感覚だっただろう。売れるところで売り切ろうという…。それがレーベル側の当時のBBへの意識だったはず。

幸か不幸か…とにかくもこの盤は世界初のコンセプトアルバムとなった?

 

背景はともかくその内容だが、まずタイトルトラック。次いで登場は個人的にベストテイク《ballad of ole Betsy》。タイトル通りのバラッドはアップテンポが売りのホットロッドアルバムで異色だが、アルバムすべてがアップアップではさすがに飽きるという配慮でしょう。で、ここでのブライアンのダブルトラックが素晴らしい。

♪she was born in '32... と歌い出す。〝ベッツィ〟は32年デトロイト生まれ…つまりは1曲目のフォード製デュース・クーペのことですな(ジャケットに大きく入るふたつの〝32〟ももちろんここから)。車は女性名詞。1曲目の車のその後について歌われている。「彼女は年老いてしまったけれど、今までの誰(どの車)よりも素敵さ/いまでも輝きは失ってないよ」…車への愛を歌詞に込めまんなあ…ロジャー・クリスチャン!

 

お次の《be true to your school》。はて、これのみ車に関係なし? しかしこの曲のビートが大ヒットへ繋がっていることはよく聴けば分かるはず…《I get around》の元ネタとみた

しかしこれ、いままでシングルテイクは単にハニーズのコーラスを足しただけと勘違いしていた。アルバムテイクとはまったくの別物だねぇ〜。BPMが違ってアルバムテイクはなんとモッタりしていることか。マイクのダブルトラックがステレオ広がりで悪くないんだが、バックトラックが変。シングルテイクはレッキング・クルー演奏だろう。アルバムテイクはそれを若干遅くしてデニスのスネア打ちを重ねたように聞こえるのだが…。曲仕上がりの順番はどうなっていたのだろうか。アルバム収録のためにわざわざそんな事をするのもおかしいかも…。ともかく圧倒的にシングルテイクの高揚感が勝る。しかしシングルテイクはまだステレオ化されてないんじゃなかったかな。ステレオになったら最高だろう。

《cherry, cherry coupe》も素晴らしい佳曲。

《spirit of America》《a young man is gone》、ともにバラッド。前者は当時スピードの最高記録を作った車の名前でしょ、後者は車で逝ってしまったジェームス・ディーンを歌っているのでどちらもカーソングということ。

 

既出曲を含むとは云え、だいぶブライアンの〝油が乗ってきた〟感のあるアルバム。リリース・ラッシュの要求に応えたと思えるがそれは歌詞をロジャー・クリスティンが担ってくれたからだろう。さて、《shut down》からのカー・チューン・リリックを担ったクリスチャンはもともとDJというが、ブライアンとのきっかけは何だったのだろう。ブライお気に入りのコラボレイターのゲイリー・アッシャーが、車は苦手ゆえ旧知のクリスチャンを紹介とか…? ブライ=アッシャー=クリスチャンのトリオはサーフィン映画への書き下ろしをこの時期から始めたが、それはアッシャーの仕切りに付き合わされた格好だろう。

 

 

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のっけの《surfer girl》でノックアウトされてしまう名盤【Surfer Girl】。これ、〝produced by Brian Wilson〟の金看板が輝いた最初の盤といえる。棄て曲無し、大好きなアルバムです。サーフィン三部作の最後という位置だろうか。しかし前2作とは明らかに違い、ブライアンが自信を持って統括 (produce) した感ありあり。やりたいようにやれたというか…。《the surfer moon》《your summer dream》は他のメンバーは一切かかわらなかっただろう、ブライアンのソロ・ワーク! どちらもダブルトラックだが後者は…驚くね、まったくコーラス無しで全編ユニゾンのみ!

《the surfer moon》。《ナイアガラムーン》もこれがなかったら産まれなかっただろう、名曲。ブライアンのアウトサイドワークとして今日ではウルトラレアシングルとなっている Bob & Sheri 盤へ書き下ろしたナンバーがオリジナル。そのセルフカヴァー。

 

このアルバム、2曲を '63-6-12 録音、残り10曲を '63-7-16 の1日で録音とあるから驚かされる。10曲一日って、まあ歌入れのみの話だわな。うち2曲《the rocking surfer》《boogie woogie》はインストなので関係ないね。正味8曲か。バックトラックは前もってしっかりと録ってあったはず。なかでその2曲のインスト…なんというキレの良さか/冴えた音か(ただし《the rocking surfer》のノイズは何?…もしやレズリースピーカーの回転音では)。クルー以外の何物でもないでしょう。素晴らしい。

クルーといえば、《our car club》は【Little Deuce Coupe】へ流用したように若干このアルバムにはそぐわない感もあるものの、怒濤のドラミング=ハル・ブレインの熱演ゆえ良しとしておく。

《catch a wave》《hawaii》はブライアンのファルセット全開、《surfers rule》でわがデニス・ヴォーカル…メンバーの若い声は抜群の張りがあり、上り坂のスタートとしてよくできたアルバムに仕上がっている。

 

2-fer CD のボーナスで初出した《I do》について。

録音日からするとこのアルバムセッションのアウトでもなさそうだが、時期がごくごく近いのでここに入れたな。ファースト収録《county fair》のメロディを使い回してキャステルズへ書き下ろしたウェディングソングだが、ここで初出したBBテイクとキャステルズのテイクは同じバックトラック、…クルーによるそれでまずこのBBテイクが録られてそれをデモとしてキャステルズが録音という順かな。どちらかといえばノベルィだった《county fair》にあらたなリフをプラスしたこの曲は最良のリニューアル・チューンですヨ。いつ聴いてもいい、最高だ。90年にボートラ初出した時に興奮した1曲。チューブラーベルの響き…スペクターへの挑戦はあきらか。ハルのドラムは「そのまんま」だもんね…。

 

 

bbsurferG

バッタモンではない、キャピトル版権下のリリースは廉価専門 Pickwick よりの当時盤。タイトルこそ【Surfer Girl】だが《wendy》《alley oop》などを含む単なるコンピ、しかしジャケに惹かれて処分なし。

 

bbfrenchEP

ジャケ写は【little deuce coupe】、これはフレンチEP4曲入り。はて、どこで入手だったか…。

 

 

 

 

 

 

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