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D's Talkin' about BB_05
“Shut Down vol.2 / All
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久しぶりにこの盤を通して聴いて思うところアリ。

ビーチボーイズに限らないのかもしれない、60年代アーティスト盤ならば、レコード産業の進化/過渡期なので起こりうる事だが特にビーチボーイズの場合は顕著… Mono / Stereo / Duophonic と、盤(曲)の違いに翻弄さがち。聴く耳の印象はかなり異なる。

本来は絶対的 Stereo 好きのワタシゆえにこの盤、モノ/ステレオ盤ならば迷わず後者を採るところ。だがステレオで聴いてみると…久々に聴くと、頭からヴォーカルが強すぎないか、バックトラックが弱すぎないかこのミックスでは…そんな思いが湧いてしまった。とはいえ完全モノラルはどうなのヨというのも正直なところ。願わくば全編あらたな stereo remix … remaster でなくミックスし直しを願いたいところ。(マルチ・マスターの保存問題で無理か?)

前置きはともかく、その内容といえば… 最初に気になったのは《クレイ対リストン》や《Denny's drums》などをどう受ければよいかということ。2曲のお遊び(おまけ)はちょっと余分でしょう(1曲ならば…)。いわば「水増し」な訳で…ようはキャピトルのコンピLP【Shut Down】へ当てつけるための急造盤? いい曲もあるだけに全体的に散漫な印象が惜しい。

ただひとつ非常に気になる点がある。それは《クレイ対リストン》のなかでの《farmer's daughter》のベースの音が【Surfin' USA】収録のオリジナルより断然イイということ。元のバックトラック・テープを流してヴォーカルだけふざけていると思っていたがこの点からするとバック演奏も同時にやっていた…のかなぁ。

 

これはイイ! ベストではないがオキニな1曲…まだ女の子ファンにキャーキャー言われるだけで楽しかっただろう無垢なデニスのヴォーカルが聴ける《this car of mine》だけでじ〜んと来るワタシです。ブライアンを別格として、デニスの大ファンゆえに Denny... などと自称しているノダ。

《keep an eye on summer》《the warmth of the sun》で聴けるブライアンの声…こと声に関して言えば早くもピークかもなどと思えてきた。たまらなくいい。

頑なにダブルトラックで責めるマイク・ラヴ・ヴォーカル…これでこそ活きると確信してたんでしょうな。

サーフィン/ガレージを踏襲しての《louie louie》カヴァーは分かりやすいが、さてフランキー・ライモン曲《恋はくせもの》…これは、スペクターならどう料理するかという「試み」だったな、ブライアン。ハル・ブラインが叩いたところで九割方済んでる感も…。

《the warmth of the sun》は63年11月のケネディ大統領の暗殺をうけて書かれたという。同様にバーズの《he was a friend of mine》もロジャー・マグィンがその夜に書いたというし。ここまで政治とロックが関わるというのは日本ではないね。何をしてそれほどケネディ・シンパたりえたのだろう…WASPでない初めての大統領だから? President for young generation... だったのか。

 

《pom-pom play girl》。《fun fun fun》の〝廉価版〟のようなこの楽曲…すべてのBB楽曲で最も無視されているのはこれじゃないかねぇ。これの存在がこの盤全体の信用問題にかかわってないか?^^ しかしそれは「今の耳」での事であり、《クレイ対リストン》や《Denny's drums》と同義…〝当時=リアルタイム〟を考えるべきで、その当時にアメリカのティーが安くないLPを買う/楽しむ…ビーチボーイズに期待する事を総括するためには重要な鍵になる…なんちゃって… :-)))

いやいや、あらためて…これは大傑作じゃないですか。戦後のアメリカンカルチャーに憧れた世代、歳でいうとどうだろう…五十過ぎだろうな、アメリカのTVドラマに/ポップスに触れて〝やられて〟しまった世代の憧憬を凝縮した形がここに現れていると思う。まずジャケットから最高ですな。ワタシはすべてのBBアルバムでこのジャケが一番好きだ。beach,

pier, boys & girls, coke, sunglass... "The Age of American Innocence" がここに映し出されている。

個人的にブライアンを分けると、ビーチ時代→スタジオ時代→挫折時代→引き出され時代→ …… などと続く。最初期ビーチ時代(海に居たということでなくサーフィン/ホットロッド楽曲期の意味)の最高傑作がこの盤と再確認した。太陽輝く promised land としてのカリフォルニア…何の不安も汚れもなく希望だけが溢れる楽園(という勝手な妄想ですが…)を想起させる名盤か。

曲でいえばタイトルトラック《all summer long》で決まりですわな。♪remember when you spilled Coke all over your blouce... の歌詞、アメリカ人ならば甘酸っぱい想いでいっぱいになったことだろう(日本人でも…「分かる」のだ)。ジョージ・ルーカスが『アメリカングラフィティ』で使ったこの曲…。

アップとスローナンバーの絶妙の配置。《I get around》《little honda》《carl's big chance》《do you remember?》《drive-in》は見事なロックンロール…Bass のグルーヴが素晴らしい。(いつものダブルトラック)マイクのヴォーカルが活きるね、この手の曲では。ブライのファルセットとのからみも最高。

ひとつ残念なのはビートの利いた《drive-in》《don't back down》。ビーチボーイズの stereo mix には2パターン_ A:バックトラックがセンターでヴォーカルを左右振り分け B:バックトラックを左右振り分けでヴォーカルをリードもコーラスもセンターにまとめる_音の定位パータンが逆というふたつがある。ミディアムやスロー曲でハモリを重視するときはAパターンが多そうだがそうでもない。この盤でこれら2曲はAパターンなのが残念なのだ。ともにバックトラックが素晴らしくグルーヴィなのだから「B」にしてほしかった。特に、《drive-in》はあきらかにレッキング・クルー演奏。スレイベルも鳴りまくりのバックトラックはブライアンがスペクターを意識した最初期曲のひとつ。ハルのドラムといい、これはバックをしっかり聴かせてほしい曲なんだが…。それにしても、ステレオ・ミックスのパターン振り分けは誰が決めたのだろう…チャック・ブリッツに一任だったのだろうか。

(蛇足:mono take のみだった《all summer long》の stereo mix は【The warmth of the sun】('07) で初出。これはBパターン)

《carl's big chance》は最後のサーフ・インストとライナーにあるが、追記でこれの元題は《memphis beach》とも。なるほど! ロニー・マックの《memphis》がヒントだったか。

サーフ・バラッドでのブライアン・ファルセットも素晴らしい。《girls on the beach》、2コーラス途中での転調はハッとさせられる。これはこの後に展開されるコード・プログレッションの萌芽ですな。

《our favorite recording sessions》が不要か…ただ、リアルタイムには「ボーイズの生の声」が聴ける貴重なお遊びは、販売戦略的に不可欠ということかも。

 

ビーチボーイズ初心者にはこのレコの素晴らしさを説いてはどう? :-) …「ビーチボーイズ初期名盤」の名に値する。

ころころ変わるベストトラック、今の気分は《we'll run away》。

 

 

 

※この盤の〝ミスプリント・ジャケット〟を、随分と昔のこと…アメリカのコレクターからいただいた。《don't back down》ならぬ《don't break down》

 

 

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