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D:谷口さんはかなりバディ・ケージ*がお好きのようですけど、ペダルスティールプレイヤーとしてのバディ・ケージの魅力はどんなところですか?
T:まず居た場所がいきなりナッシュヴィルじゃない…というかガルシアの次だからねえ。
D:そうですね、サンフランシスコ…ですか。その前がグレイト・スペックルド・バード…ウッドストックでしたね。僕もGSBは大好きな盤でした…エイモス目当てで聴いてましたがバディ・ケージも。音がスライドせずにスタッカートするよう、切れた短音の三連符が続くところですかね、かなり印象的でした。逆にスティールっぽくなくて…。
T:私は【powerglide】から聴いて、後からGSBを聴いて思ったよね…この頃からすでにこの弾き方が完成していたのかって。凄いなとね。
D:それはかなり特徴的なプレイだったんですか?
「ピックカッティング無しに速弾きが凄い…? 」
T:ニール・ヤングのバックで弾いていたベン・キースね、彼はすごく特徴的で…ロックな演奏でのバックなんだよね。ナッシュヴィル的なテクニックと別の次元かな。
高田 漣ちゃんなんかにも感じる…彼は誰にも教わらずに好きに弾いていてここまでできるようになりましたという感じがあってね。ロック的なプレイをしようと思ったらあまりこまかいテクニックは考えずに練習するほうがいいのかもしれない…。
カントリーロックというのが、ナッシュヴィル派とは別のところに存在するわけだからそれでいいと思うね。そのなかではブリトー*のスニーキー・ピートは上手いほうだけど、やっぱり正統派のプレイとはちょっと違うんだよね。
D:僕はロック派として、まず思い浮かぶプレイヤーといえばスニーキーとアル・パーキンスですね。
T:アル・パーキンスは最近の演奏を映像でみたけれどもの凄く上手くなってるのね。
D:昔は違っていた (笑)? ナッシュヴィル派ほどのテクが…?
T:いや、カントリーロックとして、それほどのテクニックは必要なかったからね (笑)。
ナッシュヴィル派の代表はバディ・エモンズだよね。正統派。世界中のだれもがあの人を目指していたといえる存在…。
バディ・ケージは充分なテクニックを持ちながら、あえてフリーキーにやっていたかな、ガルシア的な…空を飛ぶような演奏…。
学生の時にヘタクソなところから初めて、二年ぐらいで人並みに弾けるところですぐにオレンジというバンドへ入ったじゃない、そこでニューライダースのカバーを既にいっぱいやっていたからね、ちょっとバディ・ケージまでのテクニックは追いつかなくて負い目感じながらやっていたかな…、ダグ・サムの曲はよかったんだけど… (笑)。
T:駒沢さんは…私よりも少し上なんだけど、同じように学生のカントリーバンドからだよね。日本でのカントリーブームでいうと第二期というか、マール・ハガードやバック・オーウェンス…ナッシュヴィルじゃなくて西海岸カントリー…その時代に駒さんは始めた世代と思う。だからちょっとロック寄りな…ベイカーズフィールドの…カントリーロックのはしりと言えるかもしれない。
D:日本でもカントリーロックのブーム…というよりもシンガーソングライターとそのバック演奏としてのカントリーロックかな、それが日本でも流行りだした70年代、そんな印象がありますね。でもペダルというと駒沢さんひとりでしたよね。はちみつぱい、はっぴえんど【風街ろまん】、小坂忠&フォージョーハーフ…。
難しい楽器なんですかねえ? 他に出てきませんでしたね。
T:もっと前だけど、スパイダースはかなりペダルスティールを使っていたよね。
D:あ〜そういえば…そうですねえ、思い出した。キーボードの大野克夫ってペダルも弾いてましたねえ…。《真珠の涙》とか《サマーガール》かなあ…印象的なプレイがありますよね。
T:京都で有名なペダルスティールのプレイヤーだったらしいね。それがどういう理由なのか東京であのGSへ参加していたわけだけど…。
当時はペダルスティールってものがハワイアンやコアなカントリーのイメージしかないからステージではやりにくかったかも…。
D:そうですね、70年代のカントリーロックの時代となってはじめてロックな楽器のひとつに入った、同じステージの上でも違和感なくなりましたね。
それでも他にプレイヤーは…駒沢さん以外には僕なんか谷口さんしか出てこないですよ。ジプシーブラッド*あたり、いてもおかしくないバンドだったのに…。
T:私もジプシーは好きでよく観たなあ。
D:凄くいいバンドでしたよね。好きでした。途中で抜けましたけど、永井ヒヨコさんのギターはボリューム・ペダルを多用してかなりペダルスティールのようなフレーズでした。
T:繰り返しになるけどニール・ヤングの影響…そこでベン・キースがペダルスティールを弾いていたことが凄く大きい…日本のミュージシャンに影響を与えたと思うんだよね。まず遠藤賢司がいたじゃない。細野さんもニール・ヤングは注視していたらしいけど遠藤賢司が先にニール・ヤング的なことを…歌唱からしてそうだったね…先にやったと、文章で書いていた。まあ遠藤賢司自身はペダルスティールの音をステージや録音で使うことがなかったけれど…。
D:ポコなんかどうなんでしょうねえ…。ラスティ・ヤングは、メンバーじゃなかったけれどバッファロー盤で弾いているんじゃないですか?
T:《kind woman》てのは大きいかもね。ただヒットということでの広がりと大きさはやっぱりニール・ヤングの《heart of gold》だったな。それと《teach your children》、この2曲がなかったら日本のロックにペダルスティールは無かったかもしれない。
D:《teach your children》はガルシアですよねえ。僕はこの手の…、この手って言うのも変ですが、ギタリストの弾くペダルスティールというのが凄く好きなんです。ロン・ウッドとか…。テクニック的にはどうなんでしょう?
T:ものすごく練習したというのではないと思うけど…やっぱりギタリストとして優れているわけだから、フレーズというか音の取り方が特徴的、素敵なんだよねえ。ガルシアなんかは、一音一音がはっきりと出ている…あれはかなり練習して習得していると思うなあ。
D:それと、ジェフ・バクスター…この人のペダルスティールもすごく好きなんです。正直、私の一番好きなペダルプレイヤーがこの人なんです。バクスターって上手いんじゃないですか?
T:上手い上手い。
D:テクもあると思うんですが、やっぱりフレーズの妙が素晴らしくて…。
T:バクスターが出てくると田村玄ちゃん*も出さないとね…。
D:田村…ゲンちゃん…?
T:知らない? いま日本で一番有名なプレイヤーじゃないかな。リトル・テンポ、ロンサム・ストリングス…。
D:あ〜、私…知らないわ。
T:彼は、バクスターを聴いてペダルを始めたという人なんだよね。世代的に君と一緒だから引っかかるところも似てるんだろうな。
あとはセンチ*の告井君が弾くね。村上の律っちゃん*も…。
D:そうだ、そういえばそうでしたね。僕はラストショウを追っかけてライヴを観て回った時期があるほど、好きなバンドでした。
T:最近は若い子でもペダルスティールをやってみたいという子が増えてるみたいで、ヤフーとかで中古を探しているみたい。中古でもそれなりに値が張る楽器ではあるけれど、トライすればいろいろな可能性のある楽器だから頑張ってほしいと思っています…。
(谷口先輩、ありがとうございました)
●エレクトリック・ギターでどこまでペダルスティールらしい音を出せるか…そのチャレンジのひとつとして実を結んだのが、亡きクラレンス・ホワイトとジーン・パーソンズが共同で開発した『string bender』。これはストラップのピンを引き上げることで弦をベンドさせる機構。その発展型として金属バーをはめ、それを腰で押すことによってベンドさせる『hip shot』もある。どちらにしろベンドできるのはB弦/一本の弦を1音上げるのみ。
対してペダルスティールはフロアペダルが3〜8個、それと膝で操作するニー・レバーは個人仕様でいくつでもつけられるというから、どれだけベンドが可能な事か…。ベンドは半音なり1音なりのアップ/ダウンで、半端な音では楽器として失格となる。ということは数多くのベンド機構がきっちり整備されて正確なピッチで変化を何度でも繰り返さねばならないわけだから、相当な精度が求められる楽器…高価になるのも致し方ないと、今回見せていただき実感した。
少し触らせてもらったが、音色はやっぱり最高…「弾きたい!」と思わずにはいられない魅力的な楽器でした。五十の手習い…ペダルスティールに挑戦?
【120619 成増:CNIO/質 谷口】