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D's Talk session #11 with 今野政司 page_2

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Sleepwalk:サント&ジョニーによるヒット曲、インストナンバーのスタンダードでギタリストの多くがカヴァーしている
ラリー・テイラー:モンキーズの初期盤でのベーシストでありキャンド・ヒートへ参加_ベンチャーズの亡きドラマー=メル・テイラーの弟
ハーヴィ・マンデル:卓越したテクニシャン_キャンド・ヒート時代に Woodstock のステージに立ってい

D:素人でも弾けるタブになった? 

K:なったね。だからこれはいわば「ヤングギター型タブ」。ついでに言うと〝チョーキング〟と〝ピッキングハーモニクス〟って言葉も英語にない和製の造語。ヤングギターが作った。

結局シンコーミュージックへは社員として入ることになってバンドスコアを随分作ったけれど、当然その「タブ」でね。いい仕事したという意識はあるな。

なかで、俺はベーシックなスコアを残したいと思って始めたわけよ。ビートルズ、ストーンズ、エアロスミスなんてのは誰でもやりたがるよね。そうじゃなくて、基本を押さえる重要性を強調したかった…。「ロックンロール・ベスト」「R&B・ベスト」「ブルース・ベスト」なんかを作った。

欧米のギタリストってのは、なんでも弾けて当たり前。弾けなければプロじゃない。【Blues Brothers】の世界だよ、ビールが飛んでくる中で弾けて一人前 (笑)。全ての客のリクエストに応えてやっとギャラ…。そこを押さえたくてベーシックなモンを作ったんだ。R&Bやブルースはごりごりな黒人のそれじゃなくてあくまでもロック寄り…ブルース・ロックのテイストね。

D:今野さんも好きだろうけど、オレはブライアン・セッツァーが世界で一番上手いギタリストだと思うのヨ。何でも弾けるテクニックならば少なからずいるよね、ギタリスト。でもそのすべてに抜群のノリとタメ、でもってニュアンスてんこ盛りってところがセッツァーの凄いところだね…。

K:そうそう。モリタケと一緒にインタビューしたことがあるよ。

D:たぶんセッツァー…レス・ポールがテープを早回しして録音した曲をそのまま弾けちゃいそうだし (笑)。レスが「おい小僧! 俺のレコード、そりゃぁ生で演奏してないぞ」とか言いそうな…。

スローでジャジーなのからカントリーピッキンでもブルースでも全てこなすセッツァー…あれぞプロのギター弾き!

K:…なんだよなあ。

D:あとさ、その前の世代だけれどジョン・フォガティ…天才的に上手いね。ギターの神 (笑)!

K:来るねぇ (笑)、ジョン・フォガティ!

D:リック・ヴィトーを知ってる? 後期のフリートウッド・マックに入ったギタリスト、セッションが長いけどね。ヴィトーも上手いンだ!

K:ん? …それは知らないな…。

D:まあ誰にしろ、ギターを手にした時に何でも弾いてみるところから始まってるんだね、きっと。レス・ポールもやる、カール・パーキンスもやる、《sleepwalk》*は押さえておく…とかさ (笑)。それらを弾き倒した上で、さあじゃあ自分は何をやろうか…そこが出発点になっている。

K:俺はそこまでギターを弾けなかったんだけど、残しておきたいんだ…ロック・ギターの、まあ本道かねえ。ちゃんと継承されていってほしいと思うわけ。

メタルやハードロックやっているギタリストもそれだけで来ているわけじゃないんだよな。俺はリッチー・ブラックモアが好きなんだけど、彼のスピード感のある速弾きが好きなんだ。いや速弾きならスピード感当たり前と思ったら大間違い。速弾きする時の早い遅いではなくて、早く感じさせる弾き方を開拓したことを尊敬しているんだ。

D:今野さんはベンチャーズ本をかなり手がけていたよね…あ、そうだ思い出した、ノーキー・エドワード&加山雄三のジョイントコンサートのパンフ/ポスターは今野さんがオレに振ってくれた仕事だったね、その節はどうも (笑)。

K:いやいや。シンコーを辞めてからも、定期刊行ムックの『エレキ・ギター・ブック』、『アコースティック・ギター・ブック』と、『ギターレジェンド』シリーズには関わり続けたからね。

D:でさ、ベンチャーズなんだけど一部で、レコーディングにはメンバーは参加していなかったなんて話があったじゃない。今野さんが取材してきたのはかなりコアなベンチャーズおじさんばかりでしょ、「ノーキー神様」みたいに崇めてる?  (笑)…おじさんらは許せなかっただろうね。

K:誰が言い出したかしらないけど、そこらが歴史認識の甘さっていうかさ、ロック…いやショー・ビジネスを分かってないなと思うわけヨ。

ロックと言ったってショウビズなんだからね…メインは〝ショウ〟でしょ。つまり人前の演奏=ステージこそ飯のタネなんだよ…少なくともアルバムがメガセールスを記録する70年代以前はね。レコーディングとライヴはまったくの別物。基本はステージであって、LPってのはそのプロモーションの一環にすぎなかったわけだから。レコーディングはスタジオミュージシャンがやるのが基本なんで別にベンチャーズに限らず…まあ全員不参加も場合によってはあるかもしれないし (笑)、ギターだけは弾いているとかさ、そんなの当たり前でことさらどうこういう問題じゃない。

D:ビーチボーイズなんかその最たるもんだからね。オレはベンチャーズの【rock'n'roll forever】が大好きな盤なんだけど、これはラリー・テイラー*が仕切って仲間のギタリスト=ハーヴィ・マンデル*に弾かせた盤だよね、マンデル好きなオレにはたまらない名盤なのよ…でもやっぱり〝素晴らしいベンチャーズ・アルバム〟… (笑)。

K:ビートルズですら、ジョージ・マーティンや、後にはエリック・クラプトン、ビリー・プレストンなどの助っ人があったことは事実だし、そのような存在は他にも居たかもしれない。60年代にはひたすらツアー、ツアー、ツアー…マネージメントとしては公演をどれだけ打てるかが腕の見せ所…稼ぎ場所なわけだからね。レコーディングしてないから下手だったのかといったらとんでもない。ライヴバンドとして誰も最高だったよね、ビートルズも。なにしろPAモニターも無い、アンプは自分の真後ろ…そんな状態で人前でやるんだよ、他のメンバーの音なんか拾えるわけない。いまはひとりひとりにイヤーモニターじゃない、そんなもんありゃしないんだから。そこでお金を取るだけの演奏をするってことは、各人に完璧な「タイム感覚」があって初めて可能。相手の音が聞こえなくても演奏を全うする能力…今のリスナーにここを理解しろといっても無理だろうけどね。

録音でいえば…当時は2トラ、せいぜい4トラ。後でいくらでもオーバーダブの今と違うからさ、ミスは許されないよね。サウンド・トラックのレコーディングなどでは、ドラムだけでもリズムキープと〝オカズ〟係のふたりいて、さらにパーカッション。ベースなんかエレキとウッドと…場合によってはエレキが4弦と6弦とで都合ベースだけで三人なんて世界だよ。たぶんベンチャーズ録音でもそういう形態だっただろうし。そこでは誰がいて誰がいないなんてのは問題になってない…。

D:今頃のほうが過去への興味が大きくなっているから、正すべき所は多くなってんじゃないのかな。

K:ついでに言えば、ビートルズがオリジナル楽曲をひっさげてロック・ヒストリーを作ったように語られるけれど、それはその前にクリフ・リチャード&シャドウズありきでしょ…、彼らが職業ライターではなくて自分らの曲を自分らで書いてヒットさせたのをみて、ジョンやポールは同じように自分たちも曲を書こうとしたはずだよね。

D:過小評価に甘んじているアーティストがいかに多いことか…? じゃあまだまだ書いてくださいよ、今野さんが。

K:自分のホームページを立ち上げるのは時間が掛りそうだから、いつになるかわからないけどね。

 

 

 

 

【120902 今野宅】