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Johnny Rivers 70's _page 2

なによりもリバースの魅力は無理の無い伸びやかな歌声だった。フェイクすることもない歌唱は60年代からすでにその後のSSW時代の〝自然な〟それに近かった。それが十分に発揮されたこれら70年代の諸作品なのにセールス的にもジャーナリズムにも採り上げられることがなかった記憶…惜しいの一言。前述どおりにこの時代でもカヴァーが大半を占めていたということがマイナスであったかもしれないが、それも〝あらたな料理法〟として味わい深いものであるし、なによりスタジオミュージシャンが最も輝いた時代のロサンゼルスにおける最高のセッションが記録されているという点も再注目してほしいと思うわけデス。

ひとつ残念なのは…生まれはNYで本名 John Henry Ramistella、この70年代にはNYでもスタジオセッションで数々の名盤が生まれているのでリバースにもNY録音盤があったならよかったのにということ。ガッド/ジョー・サンプル/ウィル・リー/ヒュー・マクラケン/ジョン・トロペイら手練れバックにジョニー・リバースの歌声が乗ったならばどんなレコードができていただろうという想像だけが広がるが…。

 

 

 

 

121031

【Road】('74 Atlantic)

 

side A:

lights on the highway

wait a minute

geronimo's gadillac

i like your music

sitting in limbo*

 

side B:

six days on the road

see you then

a good love is a good song

artists and poets

breath*

 

all tunes recorded at Nashville (except * at Muscle Shoals)

produced by Johnny Rivers & Bob Montgomery

 

 

Imperial レーベルの稼ぎ頭として60年代を過ごした後、70年代は United Artists へ移籍し、往時のようなヒットにはならないが好盤を続けたリバース。落ち着いたかとみえたがその後はレーベルをなぜか転々とする。この盤はアトランティックからの唯一盤で、ナッシュヴィル録音。

 

2曲のみマッスルショールズ録音を含むのが「?」…リンダ・ロンシュタット盤にわずか1曲のマッスル録音曲収録というのがあったが、さてここでのリバースもわざわざマッスル詣でしてわずか2曲しか録らなかったのだろうか。そのリンダがA面の3曲でコーラス参加。

ナッシュヴィルということでマイク・リーチ/ジェリー・キャリガンのリズム隊にレジー・ヤングのギター…お馴染みのメンバーがバック、全編で相変わらず冴えたレジーのプレイ。他のギタリストに比べとりわけ音がデカくないですか? この人は毎回。セッションプレイヤーというには主張が強いといつも思うのデス。上手いからいいんだけれど…。

ジム・ウェッブが1曲書いている。ストリングスアレンジも。ここでも一際目立つメロディメイカーぶり。

マイケル・ジョージアディスといえば、ex-イーグルス/バーニー・リードンと連名アルバムを出したことで知られるSSWだが、それ以外の活動はほとんど知られていないんじゃないかな。が、マイケルは70年代を通してリバースとの関係は続いた、プレイヤーとして/コラボレイターとしてリバースの活動を支えた名前。この盤でも共作1曲、単独で1曲を書き下ろしている。

他はいつものようにカヴァーソング。なかでマッスル録音の《sitting in limbo》が興味深い。オリジナルのジミー・クリフのテイクも実はマッスルでの録音であったから、この選曲はたぶんマッスルリズムセクションから教わって…彼らのほうからリバースへオファーした楽曲のような気がしますナ。

 

正直ナッシュヴィルの音とジョニーとの相性…若干違うかなぁという感も…。なにしろ大都会の人なんでね、ジョニー・リバース。チャレンジは買うけれど、傑作並びのなかでは頭ひとつ落ちた盤でした。

 

 

road

【New Lovers and Old Friends】('75 Epic)

 

side 1

It's the same old song (H-D-H)

Help me rhonda (b.wilson)

Spare me a little (c.mcvie)

Can I change my mind (b.despenza-c.wolfolk)

Postcard from hollywood (n.doheny)

side 2

New lovers and old friends (t.uhler)

Dancin' in the moonlight (s.kelly)

You better move on (a.alexander)

You can get it if you really want (j.cliff)

U.F.O. (m.georgiades)

 

joe osborn / jim gordon / david kemper

michael omartian / larry knechtel

dean parks / larry carlton / gary coleman

jim horn / chuck findley / jackie kelso

herb pedersen / michael georgiades / waters

ed greene / scott edwards / james hughart

ben benay / tay uhler / david t. walker

 

ナッシュヴィル録音のアトランティック盤の次は CBS/Epic から、本人のプロデュース盤でエピックのロゴと並んで自身が主宰する Soul City ロゴの入った盤。やはりロスが似合う人、ハリウッドの Sound Labs / Wally Heider、それとビーチボーイズの「城」であった Western Studio での録音。

ビーチボーイズの名前が出たところで…この盤はその〝関係盤〟として知られる一枚。BBカヴァーにご本尊ブライアン・ウィルソンがコーラス参加であった。CDジャケットでは分からないがアナログのジャケを見れば、ギターを抱えたリバースが "Landlocked" Tシャツを着ているのを見て取れる。幻のBBアルバム・タイトルでありました。ブライアンを意識してのことなのかどうか…。

バッキングは常連とともにここでは Ed Greene - Scott Edwards のリズム隊が半数曲で参加、ギターには Ben Beney, Tay Uhler も。タイトルチューンはテイの楽曲。

special thanks to Brian Wilson, Tom Scott & Mike Melvoin ともクレジットあり。

 

《help me rhonda》、そのスコットがテナーサックスを吹き、Silver のトム・リードン(バーニーの弟)もコーラス参加で盛り上げた…数多いBBカヴァーでも出色の出来。つづくA3がフリートウッド・マックのクリスチャン・マクヴィ楽曲、これもいいんです。

モータウン・クラシック/アーサー・アレキザンダー/ジミー・クリフなど有名曲カヴァーとともにまず光るのは、これも今ではBB関連曲とされるキング・ハーヴェストの一発ヒット《dancin' in the moonlight》。ここで David T. Walker のギターが聴ける。思えばルー・アドラーがらみとしてもっと参加があってもおかしくないデヴィッドTだが、名前のあるのはこのLPだけだった。ワタシはもともと大好きな曲だが、このカヴァーは…デヴィッドTのギターといいアレンジといい、絶妙な仕上がりですなぁ。

タイトルトラックがまた哀愁漂いイイ出来なんですワ。

70年代リバースとしてイチ押しの盤の、ずばりベストテイクはネッド・ドゥイニーのA5。誰と言ってこの人ほどロサンゼルス・ネイティヴと感じさせるシンガーはいない…ネッド、このテイクには本人もギターで参加している。コーラスはジンジャー・ブレイク (ex- Honeys)/ウォーターズ姉妹。

 

リバースの代表作としてだけでなく、70年代ロサンゼルス録音の白眉としたい好盤。豪華バック陣だけでもそれは見て取れるでしょうし…。

 

newLovers

【Outside Help】('77 Soul City/Big Tree)

 

side 1

Outside help (j.rivers-r.knapton)

Swayin' to the music (j.tempchin)

Curious mind (c. mayfield)

For you (w.jennings)

Monkey time (c.mayfield)

side 2

One last dance (w.berry)

Ashes and sand ( j.rivers)

Rotation (m.georgiades)

Flying away with you (j.rivers-w.berry)

 

70年代のラスト盤、掉尾を飾るアルバムはアトランティックへ戻ってのリリース( Big Tree はアトランティック傘下)。

ここからリバースとしては最後の全米大ヒット…ビルボード10位となった曲が生まれた。A2がそれ、タイトルは "Slow dancin' " のほうが知られるだろう。ジャック・テンプチンが Funky King 時代に書いた名曲をリバースはカヴァーヒットさせた。

A3も副題《um, um, um, um, um, um》のほうで知られるのかな。カーティス・メイフィールドがメジャー・ランスに書いた64年曲は、ワタシのなかでは微かな記憶…GS=カーナビーツのアイ高野が歌っていた《ウム・ウム・ウム》ですな。カーティスのソフィスティケイトな塩梅はリバースの持ち味とベストマッチ! 2曲採り上げているのも納得の選曲(過去も含めカーティス好きなリバース)。

共作含め2曲を(元 Timber)ウェイン・ベリーが書いているのに目が行った。74年のソロ盤はロス/マッスル/ナッシュヴィル三カ所録音で、リバース盤に負けない豪華なメンバーをバックにした傑作、話題になったあのベリー…。

 

ジム・ゴードンは1曲のみ。75年盤に続いてエド・グリーン/スコット・エドワーズ組がドラム/ベース、ケルトナーも久々に顔を見えた。この盤でも活躍はやはりディーン・パークス。パークスは膨大なアルバム参加がある人だが、代表的なプレイとしてこれら70年代リバース盤は挙げていいんじゃないかと思える。ギターにはフレッド・タケットの名前も見える。

 

ジョージアディス曲、バーニーとの双頭盤【natural progressions】収録曲は恒例の選曲だがそれも含めて渋めというかSSW然としたナンバーを集めていて、オールディーズ/チャック・ベリー/モータウンなど誰もが知るカヴァーが多かった過去盤とは一線を画す内容となっている。ディスコとパンクの嵐が吹き荒れる前夜といった感もありますナ。音楽業界での立ち位置が怪しくなる前に、虫の音も涼やかな大ヒットが最後に生まれたのは皮肉なものだったか、それとも最後の足跡を刻めた幸運であったか…微妙な感、いまあらためてこの盤に耳を傾けると感じた。

 

 

outside

【Wild Night】('76 UA)

 

side 1

Wild night (v.morrison)

Something you got (c.kenner)

Brown eyed handsome man (c.berry)

Rain song (a.richter)

Georgia peach (m.georgiades-b.leadon)

side 2

Get it up for love (n.doheny)

Dear friends (h.pedersen)

Lightning special (j.rivers-h.pedersen)

Louisiana man (d.kershaw)

Reggae walk (j.rivers)

 

 

76年盤、これは問題作でした。ブートレグの様な稚拙なジャケットから、手にした時に〝コレハ廉価コンピレーション盤でアルナ〟と思わされた。レーベルも一度は離れた United Artists から。

収録曲とその曲毎バックメンツのクレジットが裏にあり。よくよく見れば '73/74/75 と三年にも渡る録音年次表記。UAがリバースのアウトテイクを勝手にまとめてリリースとも読めるが、それにしては年次に幅がありすぎ…不思議な盤なのデス。既発曲は1曲も無し。新作でした。

 

チャック・ベリー/ニューオリンズ・クラシックにジョージアディス曲などまさにリバースらしい一枚で、バックもゴードン/オズボーン/ネクテル/パークス/カールトン等々…お馴染みの顔。A1にはギターに Tay Uhler の名前なので前盤での残り曲だろう。

ということで想像するに…リバースとしてはUAとの間でなんらかの理由で1枚アルバムを出すこととなって、過去セッションのアウトテイク音源を進呈したというところでしょうな。

アウトとはいっても、既出楽曲となんら遜色無く素晴らしい楽曲が満載…実に惜しい、ショボいジャケットで大損しているトホホな盤という次第。

B1はドゥイニーの代表曲としてカヴァーが多いが、ここでも本人参加(当然前盤でのセッションだろう)。パークスのリードが冴える名演。

 

意外な楽曲を収録_A5曲。これ、73年録音とあり、そのバックは:

drums: Bill Stewart / bass: David Brown / lead guitar: Tommy Talton

rhythm guitar: Scott Boyer / piano: Chuck Leavell

 

ボイヤー&タールトンは Cowboy としても活動。リーヴェルはオールマン・ブラザーズからストーンズのバックでも活躍した名プレイヤー。スチュワート/ブラウンも含めて Macon Rhythm Section 、ジョージア州メイコンの Capricorn レコードのハウスバンドというべきメンバー。

サザンロックの手練れ達が、なぜかたったの1曲だけジョニー・リバースのバックを担当したというのは、個人的に思い入れのあるメンツなだけに意外だし驚きましたワ。

このメンバーが揃ってロスへ…とはちょっと考えられない。74年の【Road】に2曲だけマッスルショールズ(ここはアラバマ)録音が収録されたことを見ると「73年にリバースはアラバマ〜ジョージアへ…南部セッションに廻った」と考えるられませんか。

であったなら、数曲ということはないでしょう。 "Johnny Rivers Southern Tracks '73" …このタイトルで全セッションがCD化されるようなことは…ないのだろうか、あれば嬉しいがなぁ。ロス人のリバースも、ナッシュヴィルは今ひとつでもメイコン勢とのセッションはハマリがいいのです。

 

 

wildnight