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D's Talk session #16 石川茂樹 (Again) &高瀬康一
オリジナル・ナイアガラー

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【石川茂樹】ishikawa shigeki
ishikawa2
※Denny's voice
【ロンバケ】:アルバム【ロング・バケーション】
Tom's Cabin:通好みなアメリカンロックアーティストを数多く招聘したライヴ企画会社

D(以下 Dennyオク山):ワタシは1957年の生まれで…中学から大学を出るまで、70年代が丸々音楽的リアルタイムです。

T(以下 高瀬):石川さんは何年のお生まれですか?

I(以下 石川):1950年です。私にとっては64年というのが音楽的に特別な年だったんですよ。中学二年ですが…。橋幸夫とかクレイジーキャッツなどが生活のなかに流れていたところに、ビートルズ…及びそれに代表される「洋楽」ですね、それが〝来た〟と感じた年でした。その意味で奥山さんは70年代といいましたけど私は60年代こそ、すぐに〝戻れる〟ところですね。

T:『中二病』という言葉があるらしいですよ (笑)…14歳の時の価値観を一生引きずるという…。

I:まさにそうですね。自分の好きな曲をコンピしてテープにしたりする時期が誰にでもあるでしょう、その時に気づいたんですよ、ワタシの場合はほとんどが64年と。

D:でもそれって病(やまい)なわけ? 普通の事でしょう。

T:いやまあ大人になりきれない…という意味でどうなのヨ、ぐらいのニュアンスですけど。

D:「アダルトチャイルド」ってところかぁ。でも音楽好きや楽器を弾き続けている人らは、〝まんま〟でしょう…中二から進歩無し (笑)。

T:まんま、ですね。

I:「330円」というのも個人的なキーワードです。

D:シングルの値段ですね?

I:レコードを買うということがそのまま「330円」にリンクしているわけです。

D:高瀬君の14歳は?

T:【ロンバケ】* なんですよ。世代論ぽくなりますけど、80年代なんで僕らのポップスがここから始まった感がありますね。石川さんにとって当時ラジオから流れてきて最も衝撃的だった曲って…ありますか?

I:やっぱりビートルズ、《抱きしめたい》でしょうね。それまでに聴いていたモノとまったく別物という気持ちにさせられましたから。

T:でも、石川さんはあまり〝ビートルズ、ビートルズ〟とは言わない…ですよね (笑)。

I:うん、言いたくないのね。あえて言うまでもなく誰もが語ってるわけだから。ならばそれはもうお任せしましょうと。自分は人が言っていないところを広めたいという気持ちが強いですね。だからデイヴ・クラーク (ファイヴ) なんです。彼らも英国勢のひとつとして世に出てきたんですが、聴いていくとどうも違って思えたんですね。幅が広い。演奏能力があって、アレンジも冴えていたからカヴァーもいいしインストもあるんです。そこらが理解されないことで余計に広めたい気持ちにさせられるのかな…私自身が天の邪鬼だから。

T:いまだと《ビコーズ》ぐらいですもんね。

I:《ビコーズ》もいいんだけど…それだけじゃないンだよねぇ。大滝さんに関しても同じようにマイナーなほうに行きがち、【ロンバケ】はもういいんですよ散々語られるから。それよりも【LET'S ONDO AGAIN】のほうが凄いことをたくさんやっているし…。

T:マイナーを良しとしているわけじゃなく、知られていないことがひっかかるんですよね。なんで自分がイイと思う音楽がこんなに知られてないんだ!と…。

I:フレディ・キャノンのことをよく挙げるんだけど…どういう音楽かといえば「知らないかイイか」だけなんですよ。

T:聴けば必ず好きになってしまうんですよね。

 

I:奥山さんはネットをいつ頃からやってるんですか?

D:え〜と…ビーチボーイズに特化したウェブをやっていた時期もあるし、掲示板もやって今はブログを8年続けていて…何だかんだで20年近くなりますか。

T:僕と知り合ったときは始めていたから、かなり…ですよね。石川さんも早いですよね?

I:僕は1996年からなんです。仕事をしていたんです、翻訳をするところで企業相手に英文ウェブサイトを開きませんか?と提案もあったりして…。それで自分でも始めたわけです。HTML の表記でどう画面に映るかなどを知らないと仕事にならなかったので。

T:その時から今のサイトを?

I:ええ、96年からほぼ毎日の日記が記録して残してありますよ。私は記録魔なんです。

D:そこはワタシも近いですよ (笑)、ライヴはテープ録りしておいたりね…。

I:自分が毎日ネットに書き込む理由は、世の中にひとりか二人だけでも…自分と同じような趣味の人がいるんじゃないかというだけなんです。そうしたらやっぱりいるんですねぇ。

T:石川さんの凄いところはちゃんとフォロワーが出てくるところですね。影響された人が出てきて名乗りを挙げてるんです。

D:ワタシんところとはえらい違いだなぁ… (笑)。

I:ありがたいことですね。同世代じゃなくて若い世代が専らです。私の世代はインターネットにあまり入ってこないですから。音楽体験で言えば私より凄い人はたくさんいますよ、でもネットに入ってこないです。自分が貴重がられるのはその当時を観ているという…。

D:リアルタイマー…ですよね。

I:そう、リアルタイムだったことを知りたがっているんですね、皆さん。「大滝さんのライヴってどうだったんですか?」とか「動く大滝さんを観たことないです」とかね。べつに偉ぶってるわけじゃないけど「そうか、みんな大滝さんのライヴ知らないんだ…」と、立ち位置が違うことを実感しているんです、サイトを通して。

 

D:ちょっと話を戻させてもらいますが、石川さんが洋楽に目覚めた後に、まずGSがブームになったじゃないですか。彼らが洋楽志向がありながら、シングルではベタな日本語詞で歌っていたこと、どう思ってました? それらを邦楽とすると洋楽/邦楽の区別や違和感はありましたか?

I:まったく無かったですね。というのは自分で楽器をいじり始めるんですけど、それはアコースティックのギター…エレキが買えるような家でもなかったので…。それでフォークっぽいことをやっていたし、音楽もその手にハマったんです。GSってロック派とフォーク派というか…カレッジポップスっぽい物もGSの範疇だったから。奥山さんはGSはどうだったんですか?

D:小学生だったので生に観たことはまったくなかったです。兄キの影響でテレビのGS番組は好きで観てました。タイガースのトッポが好きだったンで、明治チョコレートの応募でトッポの語り入りスペシャルソノシートをもらった記憶があります。自分のロック感覚は中学に入ってからなので、単なる流行り音楽の部類でした、GSは。それでも後になると、たとえばカーナビーツ…好きだった《恋のウムウム》がカーティス・メイフィールド曲のカヴァーだったり、ロック/R&B的に進んでいたなぁと気づいたりしましたね。

I:GSはさほどブームが長く続かずに日本でもバンド志向でニューロックの時代になりましたが、その時も私はまだフォーク志向だったので、はっぴいえんどなども観てません。大滝さんから後追いで聴いた口です。当時もマイク真木とかPPMや、五つの赤い風船などを好んで聴いていましたね。

D:アコギ派…ですね。

I:70年代は会社がそこにあったため、渋谷の恋文横町〜百軒店界隈が遊び場所でした。

D:ではだいぶロック寄りに傾きました?

I:ええ。それはバイトの影響もあって。会社勤めの前なんですが、学生バイトとして深夜に有線放送のバイトをしてました。酔客からのリクエストで演歌とかかけますが、その合間に好きなロック盤をいくらでも聴けてね。それとライヴ企画運営会社のバイトもあって、日本のロックバンドのライヴの裏方です…ブルース系、たとえばソー・バッド・レビューや憂歌団…バイトしながらずいぶん観れましたね。

T:石川さんが前に自選ベストアルバムを語られましたがそこではウェストコースト系の盤が多かったですね。

I:70年代にはシンガーソングライターやアサイラム系の音楽にどっぷりだったんです。ライヴも、Tom's Cabin * のライヴなどほとんど観てました。そこで、それなりに分かっているつもりでしたけど、すごく狭い聴き方になっていたんです。それを壊してくれたと言うか…音楽の広がりを教えてくれたのは、75年でしたね。『ゴーゴーナイアガラ』です。

D:ラジオ関東…でしたね。

I:あの番組を聴き出して、そこでキャロル・キングとかソングライターチームのことや…それまで知りませんでしたからね、日本の古い歌謡曲もあり、いろいろな音楽があることを教わりました。視野が広がった…。民謡っぽい三橋美智也とか土着的な物までOKでしたからね、番組では。自分も実は好きだったけれど恥ずかしくて口に出せないようなところがあったでしょ、それらを大滝さんは喜々としてかけるんですよね。

T:はっぴいえんども、それじゃ『ゴーゴーナイアガラ』から戻って…?

I:ええ、観てないんですよはっぴいは。完全に後追いでしたね。観ているのはキャラメル・ママからティンパンアレイになって…小坂忠のバックをやってましたからね、あとシュガーベイブとか…。とにかく『ゴーゴーナイアガラ』は凄いカルチャーショックでしたね。なんでもアリなんだと思うようになって、音楽の間口が大きく広がったわけです。

D:それはありましたね。僕ははっぴいを観ていたんですけど、そして凄く好きなバンドでした。けれどはっぴいの大滝詠一と『ゴーゴーナイアガラ』には落差というか…大きく違うモノを感じました。単純にずいぶん明るくなったなぁと…弾けた感じ? (笑)。 

 

 

 

 

 

 

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