D:最後に、佐野さんにあらかじめベスト盤のチョイスをお願いしていたのでそれにちょっと触れてもらいましょうか。お願いしたのは10枚なんだけど、ある程度の知名度を持っているアーティストと無名に近いアートティスト、2パターン_都合20枚だね。
☆ソフトロック名盤CD <メジャー編>
・Fifth Dimention_ the magic garden (Buddha)
・Gary Lewis & The Playboys_ the very best of ... (東芝EMI)
・Classics IV_ the very best of... (東芝EMI)
・Cass Elliot_ the complete solo collection '68-71 (Hip-O-Select)
・Neil Sedaka_ emergence / solitaire (BGO)
・Frankie Valli & The Four Seasons_ the motown years (Hip-O-Select)
・Little Anthony & The Imperials_ reflections / I'm on the outside (BGO)
・Various: Buttercups & Rainbows_ the songs of Macaulay & Macleod (Castle)
・Association_ birthday (Warner Bros.)
・Zombies_ odessey and oracle (Big Beat)
では「メジャー編」で…。なかでアソシエイションとゾンビーズはオリジナル単独盤だね。
S:それとフィフス・ディメンションね。
D:あそうか、これもだ。…アソシエイションの【birthday】は、これって何? ボーンズ・ハウ * ?
S:そうです。アソシエイションといえば初期のカート・ベッチャー・ワークで知られるんですけど、ベッチャーはたしかに才能あってすごいハーモニーを組むんだけれど、正直やりすぎ。
D:サイケ…っぽくもある。
S:そうなんですよ。ちょっと気持ち悪い部分もあったりした。対してボーンズ・ハウの洗練が光るのがこの盤ですね。曲もいいし、ハーモニーは相変わらずすごくいい。
D:フィフス・ディメンション盤、この盤もボーンズ・ハウだっけ?
S:いや、ジム・ウェッブ(プロデュースはハウと共同)です。
D:あそうかそうか、これはジム・ウェッブ入魂の作だったね。ゾンビーズは英国勢だけど…?
S:ゾンビーズとフォー・シーズンズに関してはいまさら入れるまでもないネームバリューですけど、当時はほとんど無視された存在だったんですよ。
D:そうだね、まあゾンビーズは<ふたりのシーズン>だけ。もしくはGSがカヴァーしていた曲のオリジネイター。
S:この盤はメロトロンを使っていて転調とハーモニーを駆使した、それまでのイメージを払拭する出来でしたから。ロッド・アージェントとクリス・ホワイトとふたりの才能ある人のバンドですからね、ここで開花した感ありますね。フォー・シーズンズはもっと初期のヒット時代もいいんですけど、この最も売れなかったモータウン時代…。
D:Mowest * ?
S:そうです。フォー・シーズンズとしては悪夢の時代でしょう (笑)、1曲もヒットが出なかった…。
D:<December, 1963>と<Who loves you?>のヒットはリアルタイムに好きだったんだけど、これは?
S:Mowest の後なんですよ。Mowest 時代は売れなかったんですけど、実力はそのままでプロデュース能力は高かったんですよ。歌もうまいし。誰にも語られない時期ということであえて挙げてみたんです。
D:ニール・セダカも、名前としては古い人だけど…。
S:ですね。けれどこの2枚は<オー・キャロル>のセダカとはまるで違います。やはりセダカも作風を変えて、このころはSSWとして素晴らしい楽曲を生み出していました。けれどやはり本国アメリカでは過去のイメージが強すぎて場所がない…あえてイギリスで活動します。
D:そうだったよね。あの10CC がバックに付いた。
S:ええ、この 2 in 1 で【Emergence】は渡英直前の録音ですが、統一感のある傑作でセダカのアルバムのなかでも一二を争う出来です。
D:ゲイリー・ルイスやクラシックス・フォー好きは分かりますよ。
S:このふたつに関しては自分でも気に入っています。
D:あ、佐野さんのコンピなの?
S:ええ、東芝から頼まれて選曲したから手前味噌だけど、プレイボーイズ盤の選曲は達郎さんがラジオで誉めてくれましたね、嬉しかったです。ただ言っておきたいのはこのふたつのグループは、これだけCDの時代になっていながらオリジナル盤のCD化が遅れに遅れているんです。クラシックス・フォーなんてただの1枚もオリジナルLPのCDがないんで参ります。ベストがあるだけ。
D:ゲイリー・ルイス盤は、スナッフ・ギャレット仕事としても佐野さんが気に入る要素は分かるんだけど、クラシックス・フォーは南部バンドだし、ある意味泥臭くもあるわけじゃない。オレは南部好きだからもちろんOKなんだけど、佐野さんの趣味としては?
S:デニス・ヨーストの声とバディ・ビューイのソングライトは魅力ですね、やっぱり。
D:哀愁あふれるヴォーカル…。
S:ゾンビーズもそういうところがあったでしょ、同様に好きなんですよ。
D:キャス・エリオットもちょっと意外な感じしたけれど…これはママパパ解散後のソロ・ワークだね?
S:この盤に関しては全部がいいわけじゃなくて、バリー・マンが書き下ろした曲があまりに素晴らしいんでね…それだけでも「買い」というCDです。
D:リトル・アンソニー&インペリアルズは…さっき出てきたテディ・ランダッツォ物だよね。その2枚?
S:【I'm on the outside】は古い盤なんでどうでもいいんですが、【Reflections】のほう…ランダッツォが手がけながらももう売れなくなった時期です。それでも内容はベストですね。
☆ソフトロック名盤CD <マイナー編>
・Salt Water Taffy_ finders keepers (Rev-Ola)
・Spiral Starecase_ more today than yesterday
: the complete columbia recordings (Taragon)
・Terry Sylvester_ complete works (Magic)
・Eternity's Children_ timeless (Rev-Ola)
・Peppermint Rainbow_ will you be staying after sunday (Rev-Ola)
・Roger Nichols & The Small Circle of Friends_ the complete of... (ポリドール)
・Sunrays_ Vintage Rays (Collectable)
・White Plains_ my baby loves lovin' (Universal)
・Marmalade_ falling apart at the seams...plus (C5)
・Barry Mann_ Survivor (BMGジャパン)
D:では「マイナー編」を。まずソルト・ウォーター・タフィは分かります。
S:はい、ロッド・マクブライエンの傑作盤です。スパイラル・ステアケイスというのは、タイトルの<more today than yesterday>が唯一ヒットなんですが、パット・アプトンという人の仕事が光るバンドでした。
D:テリー・シルヴェスター…これは誰?
S:ホリーズからグラハム・ナッシュが抜けてアメリカへ行ってしまいますよね、その後に加入したのがこの人なんです。ホリーズの盤でもシルヴェスターは曲を書いているけれどそれらはまったく良くなくて…ところがソロはメロディアスで美しい曲ばかり。地味で売れなかったんですが…。
D:アルバム一枚?
S:ええ。それとジェームス・グリフィンと組んで【Griffin & Sylvester】というのを出してます。Bread のメンバーだったグリフィンですね。
D:ん? テリー・シルヴェスターはイギリス人でしょ? ならば英米混合か。…ところでこの Magic というのはどこのレーベルなの?
S:フランスです。特色のあるレーベルで、ドイツの Bear Family のような独特のリイシューをするレーベルですね。
D:エタニティーズ・チルドレンは聴いたことあります。
S:これはヒットしなかったセカンドのほうですね。
D:ペパーミント・レインボウ…。
S:そのタイトルの一発屋、アル・カーシャという人の書いた曲ですが、他にもニール・セダカやポール・レカの曲もやっていてアルバムとしては素晴らしいんですよ。一枚だけですが。
D:ロジャニコ盤は「鉄板」ということで…。サンレイズは?
S:サンレイズは<I live for the sun>のヒットよりもその後にどんどんメロディアスになって、それがいいんですよ。売れなくなるんだけど… (笑)。ヒットと楽曲の善し悪しは別物とつくづく思いますよ。
D:このバンドといえばリック・ヘンだけど、ほんと才能ある人だよねぇヘンは。
S:ヘレン・レディの【Ear Candy】というアルバムにすごくいい曲を書き下ろしているんです。
D:そうそう、オレも持ってるよ。キム・フォーリーと組んでの仕事だったね。あとソロの名曲<girl on the beach>! これって昔「サンディソングブック」にリクエストしてかけてもらった (笑)。この曲、奧さんのキャシーに捧げた曲なんだけどそのキャシー…キャプテン&テニールのキャプテンの妹。
S:へぇ、それは知らなかったな。
D:キャプテンは本名ダリル・ドラゴンで、西海岸の著名な指揮者・音楽家カーメン・ドラゴンの息子でしょ。キャシーはキャシー・ドラゴン。やはりカーメンの娘なんだね。ビーチボーイズのブラザースタジオでエンジニアしていたデニス・ドラゴンも兄弟だよね。…でさ、ネットでみたんだけどヘンとキャシーは今もマリブで仲むつまじく暮らしているらしい (笑)。
ホワイト・プレインズはロジャー・グリーナウェイ・ワークとして?
S:そうです。その後にマーマレードを入れたでしょ、マーマレードもホワイト・プレインズも結構ヒットを出してんじゃんと言われそうなんだけど、それはイギリスでの話でアメリカではヒットが無いので一応マイナーのほうへ入れたんです。マーマレードはトニー・マコーレイが曲を書いてるんですよ。
D:全曲マコーレイ?
S:いや4曲だけ。その4曲が素晴らしいんですね。それだけで買う価値ありという盤です。
D:最後はバリー・マンか。前に話し戻るけど、作風もどうどうたるSSW然とした頃ということだね?
S:ええ、これもまったく売れませんでしたが。バリー・マンはこれともう1作【Lay it all out】があってそれもいいんですが、【Survivor】のほうはイクイノックス制作なので…やっぱりこちらがいいです。
D:あ、そうか。じゃプロデュースが…?
S:ブルース&テリーです。
D:なるほど。【Lay it all out】はNY録音だったね。イクイノックスってオレにとっては最初がバーズの【Untitled】だったからかなりロック寄りな印象からだったんだけど、その後にいろいろ聴いていって変わったね。ドリス・デイまで出てくるとは思わなかった…ずばりイイ意味での「お金持ちの音楽」というか (笑)。
S:まあそうですね (笑)。
D:西海岸のボンボンの音楽_明るさ/屈託の無さ…まさに「ハリウッドの丘の上」音楽でしょう。他では絶対に聴けない clear sky music 。カリフォルニア音楽の粋とも感じる。
S:ビル・ハウス * がいいですね。
D:そうそう、あれはいいね。それとデヴィッド・キャシディ盤 * と、その2枚が個人的にはベスト。【青春のポートレート】の邦題は最低だけど (笑)。
S:そのイクイノックスの良さという意味で、バリー・マンは【Survivor】を選んだんです。
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