ALL CARR vol-ONE
レアなところをもっと入れたほうが、Buzzy Linhart, SAILCAT, Court Pickett,
Paul Anka, Tony Orland .... 未CD化アルバムから、そのほうがカッコつくかと思い、それらを聴き返したがやっぱりどーにもあかん、曲もピートのギターも見るべきものなくボツ。なので結局有名どころのコンピとなってしまった。しかしピートのギターを中心にしたコンピなので今までに聴き慣れた曲もひと味違って聴いて頂けると自負しております。我ながら時間軸に沿ってピートのギタープレイを通して聴いてみたら結構新鮮だった。
全体を通して感じたのはセッションギタリストといってもパターンはひとつじゃないなぁという事。普通にはギター1本抱えてスタジオからスタジオへ、お声あれば東へ西へというイメージの商売。しかしピートは東/西海岸への出張りは稀で基本はマッスル界隈。それにピートは卓をいじるギタリスト。ベースとなる慣れたスタジオに慣れたコンソール…、音の定位を考えながら弾くのを常としているように想える。左右ダブルトラックによる一人ツインリードもこの人の特徴。非常にプロデューサー(もしくはミキサー)的ギタリストであると改めて感じた次第。
(注:「四人衆」とは David Hood (bass) / Roger Hawkins (drums) / Barry Beckett (kbd)
/ Jimmy Johnson (guitar) のこと)
First Half
●Livingston Taylor/Six Days on the Road
まずトップはマッスル入り前、70年はキャプリコーンでの裏方仕事、リヴのファーストからお馴染みのこの曲。ストレートなロードソングをストレートに。何でリヴがこれを演ったのかよく分からないなぁ。単に好きだった? ピートのギターもオリジナリティはまだまだ、しかし歌伴としてどこまでもついてゆくオブリ(ガード)は後のピートも得意とするところ。オブリとリードの区別無いのが面白い。
ピートといえばギブソン系ハムバッカーだがここでのギターはシングルコイル=フェンダーの使用に聴こえる。
●Mel & Tim/Carry Me
ウーン、この Roger のタム打ちがたまらん。STAX からのアルバムだが録りはマッスルサウンド(以下 Muscle Shoals Sound
Studio の意)。バックはもちろんマッスル四人衆。左チャンネルでの渋目のオブリがピート。サザンスピリット溢れるR&B、どーです?良かでしょ。
●Freddie North/Raining on A Sunny Day
AMGに72年とあったが本当にそうだろうか。あまりにローカルな、あまりにイナタい音作りがシブすぎる、最高である。耳につく“オン”過ぎるストリングズ。それに何といってもこのSE!
Raining のつもりなのだろうがただ蛇口ひねっただけの音をもろ録りじゃないの、これじゃ。…イケるよなぁ。そして左チャンのピートのギターもあまりに“オン”だ。
全てをひっくるめて、前曲とは別の意味でアメリカ南部産R&Bのイナタさの極み…、それにつけても曲がいい。
Quinvy Studio での録り。Court Pickett, Chuck Leavell らがバックを付ける、四人衆はノータッチ。
●Freddie North/You and Me Together
Forever
もう1曲いかせてもらいます。今度はバラッドだ。これも…なんか文句あっか? ただただ噛みしめて頂きましょうか。タイトルはずばり…“君といつまでも”
●Bobby Womack/Natural Man
数あるキング=ゴフィン曲の中でも傑作のこの曲もほんとマッスルにハマる。もちろん本来は ".... Woman" だがここは男歌へ。そこでバックがこの力強さ。Roger
のハイハットワークはどうだ。それと右チャンのアコギ!ワマック自身じゃないかな、弾くのは。手数の多さも嫌味になっていない巧いプレイ。対する左チャンは控え目ながら抜群のオブリをピートが。マッスルサウンド録り。
●Paul Simon/St. Judy's Comet
いかにもな、SSW然としたアコギナンバーも小粋に仕上げるマッスルリズム隊。それにしてもこんなギターがピートの真骨頂じゃなかろうか。リードプレイは一切無いのに十分な存在感。指スライド全開のオブリ、これぞピート・カー。
●Wendy Waldman/The Good Love
続いてのSSWだがこちらはピアノがベース。普段は自分で弾く人だがクレジット上ではピアノ、ハモンドともに Barry Beckett。2コーラス目からリズム隊が入るところがSSW対応アレンジって感じ。しかし曲調はディープなサザンマナーとでもゆーのでしょううか、ゴスペルな響きが心に沁みる名曲。四人衆バック、マッスルサウンド録音。
●Percy Sledge/Make it Good and Make
it Last
ボズ・スキャッグズを想わせる声だけど違いますぞ、パーシー・スレッジ。
前年制作、ピート=プロデュースにして全曲をピートと共作したコート・ピケットのアルバムからパーシーはこの曲を採り上げた。ピートにとっては自作のうえ、一度セッションしているいわば手馴れ曲、コートのヴァージョン以上にいいギターを弾く。
●Percy Sledge/The Good Love
同LPからもう1曲。前々曲が自演ヴァージョン、そのウェンディ曲をカヴァーした。ゆえにこれもピートには2度目のセッション。ウェンディ・ヴァージョンと違ってのっけからピートのオブリが光る。サザンゴスペル色は倍加、素晴らしいテイク。
Quin Ivy のプロデュースだが Quinvy Studio ではなくマッスルサウンド録り、四人衆バック。
●Jim Capaldi/Whale Meat Again
ここでブリティッシュ・ロッカーが初登場。ダブルトラックのヴォーカルは後期ビートルズ=ジョンのようだね。曲調も英国的なウェットさを感じさせるがそのせいかピート、珍しく泣きのギターの弾きまくり。
聴いていて思い出したのはボズ・スキャッグズ=ファーストでの "Loan Me A Dime" 、デュエイン・オールマンの泣きのギターで有名な同ナンバーを彷彿。同じマッスル録り…もしやデュエインへのオマージュではと想わせるようなピートの弾きっぷりなのだが…。 四人衆からいち抜けがバリー、キーボードは
Rabbit が弾く。(それにしても盤質悪くてゴメン!)(... take a little break..)
Second Half
●Rod Stewart/This Old Heart of Mine
ロッドにとっての最高傑作LPから最高の曲を。アイズリーズ=モータウン時代のカヴァーだがピートにとっても最高のセッションと言えるこのナンバー、何度聴いても飽きることがない。しかしバックは四人衆ではなさそう、メンフィス録りか。ピートは出張りの参加だろう。
緩いリード、三連符、指スライド、とピートの特徴あるプレイ満載。
●Wayne Berry/Another's Lifetime
ロス/ナッシュヴィル/マッスルと録り分けたLPからのマッスル録音曲。もちろんの四人衆にピートと Reggie Young のギターが絡む。左右ダブルトラック・リードはピートだろうからレジーの影は薄い。 この一枚で消えたとも言える人だがそれにしてもよく出来たアルバムだった。
●Kim Carnes/It's not the Spotlight
これまたピートのダブルトラック使ってのギターが炸裂(…はいささか大げさか)。“マッスルこの1曲”とも言うべきこのナンバーは、もちろんのマッスルサウンド録り/四人衆バック。全編ピートが弾きまくるこのバックトラックは本来ロッドの『Atlantic
Crossing』から流れて然るべきマッスルトラック、なんでそうならなかったのか不思議でならない。Hood & Hawkins のリズムといい、最高じゃないスか。それにしてもアルバムタイトルが『Sailin'』…、ロッドへの当てこすりでもあるまいが…。
●Bob Seger & The Silver Bullet
Band/Mainstreet
くり返されるリフといいリードプレイといい、これほど澄んだ、透明感あふれるピートというのも珍しい。看板に偽り有り、バックは四人衆でマッスルサウンド録り。
●Mike Finnigan/Performance
ピートのギターが最も良い音質で録れていると思わせる盤がこれ。リミックスが Bob Clearmountain なんだよなぁ。全編マッスル色でいっぱいのアルバムからフィニガンの歌の上手さが際立つアラン・トゥーサン曲をチョイス。渋すぎる
Jimmy Johnson のギター(右チャン)にも注目。ピート、ここまでくればもう指スライドうんぬんもいらないっしょ。
この曲74年に Joe Cocker が『I Can Stand A Little Rain』の中で採り上げているが出来は断然フィニガンが上。ジョーももっと早めにマッスルへ詣でるべきだったさ。
●Pete Carr/Journey with the Breeze
いままでオブリ中心の控え目だが曲を生かすピートのプレイを聴いてもらったが、やはりたまには思う存分弾きたいもの…で、ファーストソロからこれを。アルバムタイトル「一切言葉(歌詞)無し」、インストに徹しての弾きまくり、想うがまま…。
そこまで弾くかとアルバムは聴き通すのが若干辛いがポップなこの曲ぐらいならいいだろう。フルートとストリング・シンセが時代というか、Fusion
カラー強しでいまひとつ?…まあ、たまなので許す。
●Lenny Le Blanc/Desert Cowboy
Dr. Hook アルバムをポップカントリー、趣味に合わずと書いた。ならばこの曲は? …これがね、違うんですワ、まったくドクター・フックやケニー・ロジャーズとは違うんですな、オレの中では。限りなくカントリー、タイトルもカウボーイなんてなっているけどそれでもこの曲は、このLPはカントリーじゃなくてマッスルであり、ロックなのですヨ。どーしてと問われても困る!
ドブロもピート。ピートはドブロもよく弾く人である。Butch Leadford のべースに Roger Clark のドラム、とピート組によるセッションで、録りは
Sheffield の Broadway Sound Studio 。ピート=プロデュースなので当然ミキシングまで手掛けている。三連符リードプレイがイケます。
●Le Blanc & Carr/Falling
続いてル・ブラン&カーを。この曲は珍しくワウを使ったプレイだが、ピート・ギター的には大したモンは無い。それでもやはり入れておいたのは一般的にはピートの名をもっとも知らしめた曲だろうから。全米13位まで上昇したスマッシュヒット、まさかここまで売れるとは本人達も想像していなかったのでは。 琴線に触れる甘いメロが書ける人である、レニー・ル・ブラン。
●Le Blanc & Carr/Desperado
言わずと知れたイーグルズの大名曲をカヴァー。奇をてらわずストレートに、ほとんど完コピといった感すらあり。しかしラスト前のキレのあるプレイはさすがにピート、きらりと光るとはこのこと。
●Jack Tempchin/Skateboard Johnny
自身のアルバムはもちろん、ル・ブランのソロ、ル・ブラン&カー、とピートのプロデュース作が続いたがそれらはいわば「身内仕事」。対しラストのこれはきっちりとお仕事らしいプロデュース作。元
Funky Kings として知られるテンプチンのファーストソロをピートが手掛けた。ギターも当然ピートが弾く。フェイドアウトにかけていいフレーズを弾くのもピートの特徴のひとつ、余韻を残しつつ
VOL-One はここで締め…。
.... Continueing to Vol-Two
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