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ジョニー・リバース。日本ではまず語られない名前。オールディーズに組まれるような…60年のちょいとロックよりなロサンゼルスのポップシンガー…程度かも。いわく〝ミスター・ゴーゴー〟。しかし本国、とりわけ西海岸では大の人気者だったのでは。それはパフォーマーのみならずにレーベルの主宰も含め、ロサンゼルスの〝ボス〟的存在としても。

リバースの興した Soul City からフィフス・ディメンションがブレイク。その出世作となった《ビートでジャンプ》、この作者がやはりここから大きく羽ばたいたジミー・ウェッブ。ウェッブといえばこの1曲=《恋はフェニックス》…グレン・キャンベルのテイクで大ヒット。しかしグレンよりも前に録音したのがリバース…。デモ・テープの山からウェッブのテープを掘り出したのが、最初にその才能を見つけたのがジョニー・リバースだったらしく。

自身としてはチャック・ベリー/サム・クック/ウィリー・ディクソン/モータウンソングなどのブラック曲のカヴァーでヒットを連発。そのため、オリジナルのないカヴァー歌手…さして才能のないシンガーとして軽く見られたような気もする。

そうではないのです。立派なSSW(全米1位《poor side of town》はリバース=ルー・アドラー)だが、何しろ「耳がいい」…埋もれた佳曲をすくい上げる才にも長けたためにカヴァーが多くなってしまったと解釈したい。

そのリヴァースなんだが、ワタシは世に知られた60年代以上に70年代のアルバムが大好きなのです。素晴らしい盤ばかりなのにあまり売れなかったのは、ステージシンガーが時代におもねり無理に長髪/髭面…そんなマイナスイメージで受けとられたからではなかったか。かく言うワタシ自身それらを買いそろえたのは90年代以後のこと。

ともあれ、素晴らしき諸作品を知らしめる場がなさそうなのでここに列記する次第…。

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【Homegrown】('71 UA)

 

A)

moving to the country (c. harris - milo)

my new life (frank kinsel)

our lady of the well (jackson browne)

look at the sun (j. rivers)

rock me on the water (jackson browne)

song for michael (j. rivers)

B)

permanent change (j. rivers)

people get ready (c. mayfield)

so far away (carole king)

fire and rain (james taylor)

think his name (mincy - shanklin - coe)

 

produced by Johnny Rivers

recorded at Crystal Studios, hollywood

 

Ronnie Tutt, Jim Keltner, Joe Osborn, Larry Knechtel

Mike Deasy, Chirs Ethridge, Jim Horn, James Burton

Glen D. Hardin, Jerry Sheff, Glen Townsend, Tommy Coe

Milo, Kathy Deasy, Rita Coolidge, Cydie King, Vanetta Fields

 

 

60年代を通してリバースは Imperial/Liberty レーベルのドル箱スターとして君臨したが70年代は United Artists へと移籍、あらたなスタートを切る(United Artists 移籍は、単に Imperial カタログが UA へ売られた措置にともなう事と思われる)。

 

まず最初は71年盤。ハンド・ステッチのジャケット/髭面/タイトル…全体の雰囲気はまさにヒッピー=コミューンといったところ。ヤングブラッズ面々のお隣に住んでますってな趣ですヨ…。とことんネイチャー志向は…ポーズと取られがち?

ジャクソン・ブラウン/キャロル・キング/JTと、当時の新進SSW楽曲のカヴァーを安直とみるか先見とみるかでも評価は分かれるところかな。オキニなカーティス・カヴァーを交えながらオリジナルも3曲です。

60年代同様に70年代でもとにかくバック陣は豪華のひとこと。リバースのバックは、その時その時のロス(=ハリウッド)の最も優秀なメンツと考えていいと思いますナ。いわゆる fist call musicians なわけで。この盤ではエルヴィス・バック=TCB Band (take care of business band) タット/バートン/ハーディン/シェフと全員集合に目が行く。

ドラムはタットとケルトナーが半々。ベースはオズボーン/エスリッジで半々。そこにネクテルの kbd とディージーの gtr という布陣中心でのセッション。

 

A面トップが《moving to the country》、B面は《permanent change》。ネイチャー志向一直線のように取られそうだが、そうでもないんだ内容は。録音はロスであり、音はメンツ通りの LA swamp 、張りがあって伸びやかなリバースの声に変わりなく、極上のリバース・ハリウッドアルバムと云える。

JB/JTにカーティス、有名曲のカヴァーは奇をてらったアレンジされているわけではない。極々ストレートな仕上がりだがバッキングの妙…手練れ連中のヘッドアレンジが絶妙ゆえに惹かれる仕上がり。とりわけマイク・ディージーのギターがいい。派手なリードパートは皆無なのに各曲に素晴らしい色づけを見せる。ある曲ではエレキでなくガットギターでオブリガード、いいです。この人はワタシの中で Ben Benay と並ぶ『存在が希薄なようで実は重要なセッションギタリスト』。

ひっかかるのはラストチューンのみ。ジーザス賛歌…クワイアをバックにもろゴスペル。こうまであからさまに〝ハレルヤ〟されると、born-again christian かいなという感が強すぎて…ワタシは引く。

 

 

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【L. A. Reggae】('72 UA)

 

A)

rockin pneumonia and boogie woogie flu (j.vincent-h.smith)

knock on wood (s.cropper-e.floyd)

brown eyed girl (v.morrison)

memphis 72 (c.berry)

on the borderline (j.rivers)

come home america (j.rivers-m.georgiades)

B)

stories to a child (j.rivers)

mother and child reunion (p.simon)

crazy mama (j.j.cale)

new york city dues (j.rivers-m.georgiades)

life is a game (b.leadon-m.georgiades)

use the power (j.rivers-m.georgiades)

 

produced by Johnny Rivers

recorded at Western Recorders, hollywood

art direction by Norman Seeff

 

Jim Gordon, Joe Osborn, Larry Knetchel, Jim Webb

Michael OMartian, Jerry Allison, Dean Parks

Larry Carlton, Bobbye Hall, Gary Coleman, Jim Horn

Chuck Findley, Jackie Kelso, Keith Allison

Herb Pedersen, Michael Georgiades

 

 

72年盤。お馴染みのチャック・ベリー曲を含め、カヴァー半分/オリジナル半分。ここから、リバースにとって70年代最高位に上がるシングルヒットが生まれる。ニューオーリンズ・クラシックで《ロッキン肺炎でブギウギ猩紅熱》、全米6位。ネクテルかオマーティアンか、ころころ転がるピアノがグッジョブ!

タイトルこそ〝レゲェ〟だが、それを感じさせるのはポール・サイモンがジャマイカ録音した《母と子の絆》のみ。それさえも普通に8ビートならこのタイトルは意味不明ですが…。

前盤のラストはキリスト賛歌だったが今回は投票を促すメッセージソング。 "Use the Power - Vote!" ということ。これは曲中でも "beat the Nixon" と歌われているとおりに72年大統領選への呼びかけ。民主党候補マクガバンへの支持をロックアーティストの多くが表明した年で、その共闘だろう(歌詞にマクガバンは出てこないが…)。

 

ビーチボーイズ(ブライアン)の〝城〟だったウェスタンスタジオでの録音、ゴードン/オズボーンのリズム隊にカールトン/パークスのギター、ネクテル/オマーティアンがキーボードという鉄壁の布陣。カールトンとディーン・パークス、超売れっ子への第一歩はこの盤あたりかもしれない。前述、その才を認めたジム・ウェッブがここではキーボードプレイヤーとしてのみ参加(…ちょっと解せない)。

カヴァーにしろオリジナルにしろ、これぞロックという仕上がり。やはり最高のメンバーによるバッキングは余裕綽々で、そこに乗るリバースの歌も円熟期といえそう。ただし、セッション手練れという意味ではまったく破綻の無い演奏であるがゆえに、新たな音像に驚嘆させらてこそロック!という御仁にはスリルがないかもネ。

 

この後へも続くマイケル・ジョージアディスの重用はこの盤から…。

カールトンのギターはまだジャズを感じさせるものではなく、パークスと酷似。微妙な音色の差しかないのでひとりのギタリストによる多重録音と取られそうなギターパート。そのギターがふんだんにからむナンバーはカヴァー楽曲が多く、オリジナルはアコースティックなアレンジ…その塩梅も良し。(それにしてもJJケールというのもよくカヴァーされる人だよなぁ)

 

リヴァーサルフィルム・マウントを模した変形ジャケというのもワタシには嬉しい仕様なのです、凝っている。

 

 

LAreggae1

 

LAreggae2

【Last Boogie in Paris】('74 Europe Atlantic)

【Last Boogie in Paris - complete concert】CD

('07 Shout/Soul City)

 

01: sea cruise +

02: over the line +

03: barefootin' +

04: summer rain +

05: long tall sally +

06: it's alright

07: brown eyed girl

08: knock on wood

09: rockin pnuemonia and the boogie woogie flu

10: I've just seen a face

11: stories to a child

12: willie and the hand jive

13: memphis

14: blue suede shoes

15: baby, i need your lovin

16: walkin blues +

17: take me in your arms +

18: john lee hooker '74 +

 

(+) _オリジナルLP収録曲

 

 

 

73〜4年のヨーロッパ・ツアーを記念して当地のみ発売だった74年盤がベースになって、そのコンプリート仕様がCDで2007年に発売された。

タイトルは "last tango in Paris" のもじりで、ツアー最終日パリでのギグを録音。

オリジナル8曲に対して10曲も追加された完全版がCD。ベストに近い選曲と手練れメンツによるノリノリのバックトラック、70年代リバースとしては本人も最も乗った時期の熱いパフォーマンスが凝縮された好盤となっている。

手練れメンツとは前2作とほぼ同様。リバースは、それらの盤での彼らの実力に心酔し、オファーされたヨーロッパツアー…まさかスタジオでばりばり稼いでいる一流メンツがそうそう乗ってはこないだろう…と思いながらも打診したところ、毎日のスタジオ仕事にうんざりしていたのかほぼ全員が意外な快諾! 彼ら一行を "L. A. Boogie Band" と命名しツアーを敢行した。ただしダブルリードだったカールトン/パークスのうち、カールトン…それとベースのジョー・オズボーンは不参加。ジョーはフライト恐怖症なんだそうな、なので代役としてジャック・コンラッドを指名している。

 

前2作収録ナンバーを中心にしたセットリストは、自身のヒット/サザンソウル/ニューオーリンズ/モータウン/お馴染みチャック・ベリー/ビートルズ/オールディーズロックンロール…観客を乗せ、楽しませる実にエンタテインな内容。さて、これを〝ショービズ〟と流されがちなのがこの時期のリバースの辛い立ち位置。この好盤が(曲は少ないとはいえ)当時に本国アメリカでの発売が見送られたという事実をなんとしよう…。

曲毎の説明は省くが、数々のアルバムで名演奏を聴かせているジム・ゴードン、それとギタリスト=ディーン・パークスの白眉ともいえる熱演がこのCDに刻まれていることは確かなのデス。特にゴードンの、硬軟・遅速とりまぜて最も乗ったドラムはリバースにとって必須であったと思わせる盤ですナ。

 

 

lastBoogieParis

【Blue Suede Shoes】('73 UA)

 

1955 to 1965 :

1. blue suede shoes (c. perkins)

2. medley: searching(leiber-stoller) - so fine(j. otis)

3. it's all right (c. mayfield)

4. hang on sloopy (russell - farrell)

5. I'll feel a whole lot better (g. clerk)

6. solitary man (n. diamond)

 

boogie side :

1. over the line (omartian - dahlstrom)

2. willie and the hand jive (j. otis)

3. got my mojo workin (p. foster)

4. turn on your love light (malone - scott)

 

produced by Johnny Rivers

joe osborn / jim gordon

michael omartian / larry knechtel

dean parks / larry carlton / gary coleman

jim horn / chuck findley / jackie kelso

chorus: herb pedersen / michael georgiades / james hendricks

 

 

前作とほぼ同じメンバーを従えた73年盤。

A面は「55〜65」サイド、オールディーズサイドというにはバーズやインプレッションズはそぐわないか。ニール・ダイアモンド曲はそんなに古かったっけ? とチェックすれば66年曲、ちょいミス。

バーズの《すっきりしたぜ》はワタシもオキニの1曲なので嬉しいカヴァー。《hang on sloopy》はタイトルこそマッコイズのそれだがゆったりめのアレンジはオリジナル= Vibrations のテイク《my girl sloopy》を踏襲している。これが抜群、A面でのベストテイク。

好きな楽曲カヴァーを列べただろうA面は、ファン受けはしてもロックジャーナリズム的には昔のままでオリジナリティに欠けると取られたんじゃないだろうか。タイトルが【blue suede shoes】というのも、あぁジョニー・リバースのアルバムね…とあっさり流されそう。

そんな杞憂もB面のブギーサイドを聴いてもらえれば吹っ飛ぶはずなんだが、そこまで世間は付いてきてなかったかも。

 

まず、書き下ろしか、オマーティアンのペンによる曲からがっちり力の入った演奏が堪能できる。B面全体が Funky とも云えるノリで低通する。しかし臭み重みは無く、西海岸らしい軽快さが妙味。ロスのトップセッションメンの最高のプレイが全編に渡る。パークス/カールトンのギター良し、ゴードン/オズボーンのリズム隊良し。とくにゴードンは【いとしのレイラ】でのドラミングを彷彿させる怒濤のプレイ。

グレイトフル・デッドでお馴染み《turn on your love light》はボビー・ブランドのオリジナルで、ここでもノリノリに飛ばしている。

 

前盤に続き、変形ジャケット。センターの写真は刷り込みではなくて別紙=ポストカードなのだ。実際に使えるポストカードの天部分だけ糊付けしてあるという凝った仕様(なので剥がして使えるがやった者はいないだろうな:日本盤はたんに刷り込みだった)。そのカードの裏に "blue suede shoes" …洒落ている。タイトルは〝靴ひも〟文字であり、その部分はエンボス仕様…とことん凝ったアメリカ盤だった。

このデザインは、西海岸ロックグラフィックでは知られたひとり=ジョン・キーによる。

 

 

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