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D's Talk session #19 with 斉藤哲夫 page_3

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キンちゃん:キーボーディスト竹田裕美子_ちょっと知り合いなのでこう呼ばせてもらいます^^
アーリー:アーリー・タイムス・ストリングス・バンド
再結成:アルバム『9th June 1988』に<甘いワイン>が初収録_ライヴテイク
イージー・ライダーのバラード:Byrds 同名タイトルアルバム収録曲
I want you:Bob Dylan_【Blonde on

D:ソニー時代はアレンジャーが瀬尾一三さんですよね。

S:そうだね。前田 仁が…プロデューサー? ディレクターかな?

D:ええ、プロデュースとなってます。瀬尾さんの起用というのはソニー側から、ですか?

S:いや、瀬尾さんは『8分の6』(=【君は英雄なんかじゃない】)のときから…。

D:斉藤さんからお願いしてですか?

S:あれは…どうだったかねえ…。

D:今の時代だとアーティスト側からアレンジャーのチョイスというのもアリじゃないですか。

S:当時はそんなにいなかったもん。瀬尾さんにしても弦のアレンジは俺かチューリップが初めてじゃない? まだほとんどやってなかったと思うヨ。

D:バックミュージシャンはどのようにして集めたんですか?

S:それは…瀬尾さんだね。コーディネイターとして。

D:その顔ぶれを見て、斉藤さんとしてはどんな思いだったんですか?

S:初めてだからさ、バンドなんて。どうこうないよ。

D:とりあえずお願いします…みたいな?

S:トランザムってのは凄いンだぞとか言われるから、ああそういうモンなんだ…ってね。

D:そうですね、チト(河内)さんとかも入ってますね。その中で、オーパス組からは…。

S:岡田と白井がいた。

D:【バイバイ】からやってましたね。それで…【僕の古い友達】では、勝さん、それにキンちゃ * が…。

S:そうそう。でさ、《グッドタイムミュージック》だけがシングル盤としてバックがティンパンアレイなんだよ。松任谷と林立夫と。ベースは…俺、細野さんとひと悶着起こしてるからさ (笑)。

D:え、そうなんですか? (笑)

S:だから、その代わりにベースは慶一の弟。

D:博文さんですね。ティンパンと博文さんとは知らなかったなあ…。シングルテイクってことですか?

S:いや、同じテイク、アルバムも。

D:岡田さんや良明さんの参加は、斉藤さんが古い仲間ということで頼んだんですね?

S:そう。でも岡田はもういないんだ。クレジット無いだろ?

D:え? そうだ、【グッドタイムミュージック】ではないですねえ。

S:もうムーンライダースへ行ってるのよ。白井は頑張ってくれたけどね。

D:勝さんは…【バイバイ】【グッドタイム】でやってなくて、【僕の古い友達】で参加というのは…?

S:勝は勝でバンドあったり、忙しかったから…。【僕の古い友達】ではうまく都合がついたんだな。俺が【グッドタイム】作ってる時に勝もソニーで…、ん? ソニーでは何やってたっけ?

D:アーリー * のシングルはソニーからです。

S:そうか。で、ソニーに来て、勝も話聞いてるのよ…<哲夫がもの凄い録音やってる>って。今となっちゃ物まねだけどさ、当時は全然気にしなかったヨ…【アビーロード】みたいのを作りたいって気持ちが一杯で。B面がメドレーになってるってやつさ。

D:あ、そうでしたか!あのB面は【アビーロード】かぁ〜。

S:それっきゃないじゃん。そこまで行かないけどさ (笑)。

D:《グッドタイムミュージック》という曲名はどこからですか?

S:たまたま出てきたの。〝グッド〟っていいじゃん。《バイバイグッバイ》もそうなんだけど、いいノリなんだよなあ。

D:そういえばどちらも入ってますねえ。

S:《バイバイグッバイサラバイ》ってのはなかなか上手くできたタイトルだなって自分で思う。 

D:僕もそう思いますヨ。

S:goodbye が「さらば」でララバイ (子守歌) をかけてね。ただ岡田がいまだに俺と接触してこないのはさ…LPのなかでいくつか詞を岡田に助けてもらってるのよ。「昨日の悲しみはもう聞こえない」とか…こういう言葉は俺は出てこないわけ。でも岡田はちょっとした詩人だから。「夜のとばりが…」とか、いい詞じゃん!となって、もらってる。

D:なのにクレジットがない…、根に持ってる?

S:うん根に持ってる気がするんだ (笑)。いや岡田はもう忘れてるかもなあ…。岡田は上手いからね、16とかもOKで。ニューオーリンズっぽいのも得意。

D:シンコペーションの利いたやつですね。

S:慶一と勝は(ピアノは)8ビートしかできないの。俺の曲で《甘いワイン》というのがあって勝と何回かやったんだけど、16っぽくは弾けない。俺は「白玉でいいよ」って言うんだけど、必死にやろうとするんだよな (笑)。この曲ははちみつぱいが再結成した時 * にやってて、このCD(【ダータ ファブラ】)でもやってるから聴き比べてみて、全然違うから。最初に慶一に聴かせてやってみた時は、8ビート。どうしても8ビートになるんだな。

D:そのように…16っぽくやろうとイメージして曲ができた時に、そのイメージどおりに作るためのミュージシャン集めというのは哲夫さんにとって大変…ですか?

S:なかなか難しいよね…よっぽど長く付き合ってないと、いや付き合っていても…。時代に向き合うのは大変なんだよなあ。 う〜ん…あがたとか慶一って…あざといというかさ…俺はビートルズで終わってるんだよ。ところが彼らはその後もグラムロックだデヴィッド・ボウイだ…80年代は…。

D:パンク/ニューウェイヴ…ロキシーミュージックとかね。

S:そうそう。それをず〜っと追いかけてきてるモンね。しっかりイギリスの音楽をやって来てるんだって、俺なんか感じちゃうわけ。慶一が松尾とやってた…シネマか、あれなんかもそうだよなあ。

D:う〜ん…でもそれは、極端に言えば慶一さんなんかは「商売」じゃないですか。仕事ですから…っていうところも…。

S:うん、そうだけどね。

D:アレンジ仕事、プロデュース仕事、レコーディング…そのための商売道具って気もするんですよ。

S:まさにそこだよ。

D:けれど、斉藤さんの音楽は…自分が強く感じたものを、インプットしたら即座にアウトプットするという…そういう風で来たわけでしょう。それは慶一さんとは別のアプローチなんで、善し悪しじゃなくてね、斉藤さんは斉藤さんでまったく「アリ」だと思うんですよ。

僕がソニー時代のアルバムがどうして好きかと言えば、戻っちゃいますが…ポール・マッカートニーの、解散でゴタゴタした後の、ソロや Wings 盤ね、アコギ1本で曲作って、作った端から納屋みたいなとこで録音してるでしょう…あのラフだけど、やっぱりメロディメイカーとしての天賦の才は隠せない…あのニュアンスに最も近い日本のレコードだと、そう感じてならないわけです。慶一さんがムーンライダースとして凄く凝っていく事、録音へ特化、スタジオ処理…そういう構築された音楽というのもアリなんですけど…。

S:《ここは六日町あたり》って曲あるじゃん。

D:はいはい。

S:あれはバーズなの。ロジャー・マッギンのギターが欲しかったわけ…できてないけどね。

D:リッケンの12弦ですか? フィンガリングのアルペジョで…。

S:フィンガリングが欲しかった。弦とギター2本ぐらいで…マッギンの〝♪Flow river, flow... 〟みたいな…。

D:《イージー・ライダーのバラード》* ですね。

S:《吉祥寺》は、最初は(五つの赤い)風船の解散コンサートでやったんだ。ものすごく遅いテンポで。それで、ソニーに移った時にこの曲もやれっていうから…クァルテットでやりたかったんだ。

D:弦楽四重奏ですか?

S:うん。でも変なリズムで終わっちゃってるけどさ。間違ったままなのがいっぱいあるんだよ (笑)…。

《吉祥寺》に関してはこのCD聴けば何をやりたかったか分かるよ。ディランの《I want you》* ってあるじゃない。

D:ディラン、知らないんですよ…(汗) 。

S:あれとサイモン&ガーファンクルの《boxer》…チキチキタカタカってリズムに乗って歌いたかった。

 

 

 

 

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