ジーニーのアルバムに共作曲が含まれていた、ニックスとも近い位置にいただろうこの人も Alabama Rockin' Guy の一人…。

#056
"Donnie Fritts / Prone to Lean"
[ '74 Atlantic/US]
produced by Kris Kristofferson & Jerry Wexler
<A:★★★★★>

 アルバム『Lenny LeBlanc』のところでクレジットに“ジェリー・マギーありがとう…”とあったことを書いた。それは現ベンチャーズのジェリーとも。しかしもしや別人ではという思いもあったのだ。というのもそこには Jerry McGee とあったから。あのジェリーは Gerald = Gerry が正しい。ところが今回気付いたがこのアルバムクレジットでも Jerry になっている。ギタープレイは間違いなく Gerry McGee 、やはりスペルミスが多かったンだろうな。ということで、ピートとマギーは旧知の関係を確認した。しかしこの二人がアルバムで顔を合わせているのはこの盤くらいじゃないかねぇ。

 それにしても好き者にはたまらん豪華なメンツが集まった盤、これ。マッスル四人衆にピートはもちろん、ギターに Eddie Hinton, McGee, Tony Joe White/ドラム&オルガンに Dixie Flyers からマイク・ユートリ&サミー・クリースン/コーラスにはリタ・クーリッジ(当時このLPのプロデューサー=クリスのカミさん)、ダン・ペン、スプーナ・オールダム、なんとビリー・スワン&ジョン・プラインまで。
 久しぶりに聴いたがやっぱり素晴らしい、そして懐かしき盤なのだ、オレにとって。大学入ってすぐに軽音楽部でバンドを組んだ。そこで先輩の一人がこのLPに入れ込んでいてここからの "Sumpin' Funky Going On" をどうしても演ろうと言い出した。何度か練習してみたがこのノリ=グルーヴが出るわけもなく…あえなくボツにしたっけ。

 A面、1曲目で Southern Funky = Swamp 全開、アコとエレキ・サイドは co-writer のヒントンだろう。ピートがドブロ、ソロ取るジェリー・マギーが見事の一語。支えるリズム隊=フッド/ホーキンスも素晴らしい。2曲目、この出すぎずそれでいて鮮やかに彩りを添えるピートのプレイは彼のすべてのセッションでも五指に入る名演だ! 曲もいいからなあ。3曲目のチッキンピッキンギターはマギーだろうか、イケる。4曲目でのボトムの効いたリズムギターこそジミー・ジョンソンの真骨頂、マッスルらしい演奏。続く五曲目もジミーのリズムとピートのオブリ(トレモロのエフェクト)にバケット/フッド/ホーキンス…マッスル最高の時かもしれないね。6曲目は、やはりマッスル物の傑作『Mike Finnigan』に近い曲があったような、ファンキーなナンバー。左にヒントン、右ピートとギターの振り分け。

 ギターといい曲といい、名曲名演とはこんな盤のことを指すンだよな。それは裏も続く、頭はフリッツ以上のファンキーガイ、トニー・ジョーのスワンプギター炸裂。2曲目、カントリーテイストを彩るピートのドブロとベケットの tack piano。全員参加コーラスのラフさもいい味。3曲目がまたまたたまらんなぁ…メロディアスなスローナンバー、絡むは絶妙なピートのオブリ…最高。4曲目、なんで今ベンチャーズなのか不思議、ねっとり糸引くスワンプ指弾きギターがしびれるジェリー“Mr. Swamp”マギーのプレイ。五曲目、アップ/スローを交互に配置でこのスローナンバーがまたまたピートの名演、名曲。Man's Man's World に参加紅一点リタのコーラスも良し。締めはハモンドが心に染みるミディアムスロー。

 ああ腹いっぱい…70年代アラバマ州はマッスルショールズ録音の粋とも言えそうな名演をたっぷり楽しませてもらいました、ひっさしぶりに…。
(030212)

 

*******
このところの流れからは最後にこの人を持ってこない事にゃ締まらない…のでピート不参加ながらこの二枚を…。

#057
"Dan Penn / Nobody's Fool"
[ '73 Bell/UK CD-reissue]
<…:★★★>

 ダン・ペン、メンフィス在のこのスワンパーといえばAlex Chilton 率いたBOX TOPSの「あの娘のレター」のプロデューサー…なんてのは後追いだし、サザン・クラシック "The dark end of the street" "I'm your puppet" 等のライターとして南部音楽の良心とも…それも随分と後だったなぁ。まあそれでも名前はあちこちで聴かされたこの裏方さんにもソロが一枚あって、それがまた傑作との評判だった70年代。オレ、当時にこれ聴いてないンだよね。で、独レパートリーからのCDでやっと。
 オリジナルLP持ってないからCDのライナーが完全かどうか分からないが、それによれば録音は地元メンフィスの Beatutiful Sounds、それとsome other nice places とあるのみ。けれど Hood/Hawkins コンビの参加もあればまずマッスル録りも、間違いないよね。
 で、たしかジニー・グリーンLPにもこの人の曲が収録されていたな、このソロにもやはりジニー/マーリン夫婦が参加。ダン・ペン、Born Again Christian とライナーにある。といってもどういうことかよく分からないンですが…、やはりお仲間、敬虔なクリスチャンなんでしょうなぁ。そうそう、マーリンのLP同様にLEO LaBLANCでスティールとあるのはレニー・ルブランなのだろう。

 ん、ライナーによれば生まれは Memphis, Tennessee じゃなくて Vernon, Alabama ですか。ティーンの時に組んだバンドがダンのヴォーカルに Daivd Briggs (PF), Norbert Putnam (B), J Jerry Carrigan (D)、なるほどねぇ。その後は…皆さんご存知だろうから省略。ともかくこのLPは…
 うーん、やっぱりイイな。多少抹香臭い曲がないでもないがノッケのタイトルナンバーといい、いい曲が続く。裏方といっても楽器裏方ではなくソングライターなのだから当たり前だが。唯一のカヴァーが "LODI" ってのも嬉しいじゃないか。シスコの南、バークリー在、CCR。売れに売れたとはいえそれは時代が合致しただけ、南部に思いを馳せて作った John Cameron Fogerty のナンバーを、Southern Guy, Dan Pennington がカヴァーならばジョンも本望ってモンだろう。オレ自身この曲はCCRでもベスト3の1曲。(「ローディ」じゃなくて「ローダイ」ね)

 

#058
"Dan Penn / Do Right Man"
[ '97 Sire/US CD]
<…:★★★★>

 ドニー・フリッツ、ジェリー・ゴフィン…20年を越えて2枚目を。ダンもやっぱり開いたヨ、24年。セカンドは97年、これは全曲マッスルサウンドでの録音だ。しかしなぁ、なにゆえエンジニアが Johnny Sandlin なんだろう。マッスルときたら Jerry Masters / Steve Melton でなければ。サンドリンはメイコン、キャプリコーンの…。そういえばJapaneseキシダ某の昨年のマッスル録音もサンドリンが手掛けていたっけ。20年の歳月は…ピートの参加やマスターズのミックスも無くし、サンドリンがジョージアから出張り、いや移りかもしれない…いろいろと変えてしまったと実感。
 マッスル四人衆= Johnson / Beckett / Hood / Hawkins うち、ベケットを除く3人参加、まずは健在にホッとする。ここでのリードギターは Reggie Young。相変わらずのいい味出しまくり。フッド/ホーキンスのリズム隊は…正直言うとなんか違うかなぁ、と。AAD、アナログ・ミックスなのだろうがやはり音がクリアなCDフォーマットだとスネアの音に変な違和感がある。LP時代のほうがハマったと。

 どの曲が昔、どれが新曲かまったく分からないが、他のアーティストで慣れ親しんだ "The Dark ... " "Do Right Man, ..." "I'm Your Puppet" 等の作者ヴァージョン、バックの朴訥なGROOVEのおかげもあって良いのです。もちろん最高なのはダンの声なのだけど。 
 B-3 Hammond Organ, Farfisa Organ, Wurlitzer / Rhodes Electric Piano …こういう楽器使うならやっぱりLPで聴きたいよ、ほんと。

(蛇足:イ)Donnie Fritts との共作3曲を含む ロ)3曲目 "It tears me up" のギターってクレジット通りにレジー・ヤングなのだろうか?どうも違う気がする…)
(030226)



#059
"Lou Ann Barton / Old Enough"
[ '82 Asylum/Japan]
produced by Glenn Frey & Jerry Wexler
<…:★>

 ルー・アン・バートンなる女性シンガー、今日まで知らなかった。レコ屋棚でジャケにピンと来て裏を見れば、ウェクスラーの名、録音はマッスルショールズ…で即買った。このLPは彼女のデビュー盤。ウェクスと共にex-Eagle、グレン・フライがプロデュース担当。
 一言で云って、ウェクスラーも衰えたり、と。(国内盤)ライナーによればNYのクラブで歌っていたところをウェクスが気に入ったとある。どこがよかったの? これはプロデュースの失敗か、ハナから才能ないのを見抜けなかったのか…とにもかくにもアルバム聴くかぎり何もありませんヨ、このシンガーには(曲も書けない)。何も引っかかるモノがないまま最後まで流れてしまうスカな盤…。

 全曲マッスル四人衆がバック、ギターのみジミー・ジョンスン以外に4名、グレンはもちろん、お馴染み顔は Wayne "Night Train" Perkins 。意外な名が Jimmie Voughan 、あの亡きスティーヴィ・レイの兄貴、The Fabulous Thunderbirds のギタリスト。ライナーによれば彼女の出はテキサスで、ヴォーン兄弟らと活動していた過去があるらしい。R&Bフィーリングをウェクスは買ったつもりだろうが、ジャニスにはほど遠く、ボニー・レイット、ボニー・ブラムレットに仕立てようにも役不足。
 まあ何ですな、第二のリンダ・ロンスタット捜しに躍起になっていたンだろう、この時期の業界は。そんであのウェクスラーからしてこんなスカに手が出たと。しかし考えてみればこのページの過去の女性シンガーもたいしたことないよ、ウェクスって女見る眼がないんちゃうか??

 

 

#060
"Joe Cocker / Luxury You Can Afford "
[ '78 Asylum/US]
produced by Allen Toussaint
<C:★★>

 愛敬のある憎めない顔ゆえどうにかいいところを見つけようと間をおいて何度か聴いてはみたがやっぱりダメだこりゃ、曲に魅力無さすぎ。リンダ・ロンスタットもそうだったがこのジョーなどのように曲を書けない人は当然選曲によってアルバムの出来不出来が激しい。もっといえば素材の人だから料理人たるブレイン=プロデューサによって色が決まってしまう。ジョーもリオン・ラッセルと組んだ時はバッチリとはまったがその後の迷走は否めない。ヒットしたとはいえ、サントラ歌って糊口をしのいだりする姿はみっともいいモンじゃなかった。
 このアルバム、基本はマッスル組とNY組の2セッション。NY組とはロックでもすっかりお馴染み、Jazz上がりの、Richard Tee / Cornell Dupree / Chuck Rainey / Steve Gadd / Bernard Purdie ら。ここに Dr. John / Billy Preston / Rick Danko / Donny Hathaway らが絡むという豪華な、そう、メンツだけならスティーリーダンにも負けないのだが…。

 プロデューサがアランお父〜さんだが、その色が薄いのもマイナスポイント。南部でも独特な New Orleans Flavor を誰もが期待するはず、がアルバムトップに自作を提供(?)しているくらいで、あとはちらっとエレピに彼らしさがあるのみ。
 ディラン曲「Watching the river flow」、プロコルハルム「青い影」、モータウンクラシック「悲しい噂」とこの3曲のカヴァーもまったくの期待外れだった。特に「噂」はこの人にバッチリのはずなのに誰のスコアか(マッスル・セッションなのでベケットと思うが)最低のアレンジになっているのが残念至極。
 ピートもこの78年あたりはだいぶ荒れた(?)ギター。4曲にクレジットされているが2曲はNYへの出張り仕事。S&Gセッションでもそうだったが、ピートはスティーヴ・ガッドらとやるようになってかなり悪くなったように思える。

(蛇足:これはピートの仕事だろうと思える「青い影」(マッスルセッション)でリードを弾くのは Larry Byrom 。ケイト・テイラーのアルバム…これとどれだっけ?…何枚かでこの名があったはず。出は南部らしいがなんとあのステッペンウルフのギタリストとして活躍の過去があるらしい…)
(030308)


#061
"Millie Jackson / Get It Out'cha System"
[ '78 Spring/US]
<C:★>

 100円箱にでもない限りもう買わないと前回書いたこのシンガー、200円であったのでつい手が出たが後悔…もうロハ箱にあっても持ち帰るまい!
 お好きな方もいられましょうがオレにはまったくダメだ。曲、声、バックトラック、何をとってもいいとこ無し。今回はB面にマン=ワイル、ケニーロジャーズ曲を配しているがそれとてさしたる出来でなく。
 全曲クロスフェイドしているのでAB面各1曲のよう、特にA面はライターが違うのに同じように聴こえる。この面は歌うというよりも喋り=ラップ状態。78年盤だが(これは国内盤)ライナーには“ミス・ラッパー”と呼ばれている、とあるのだ。?この頃すでに“ラップ”という言葉があったのか?(Rap oldest shcool = Sugar Hill Gang/"Rapper's Delight" はいつだっけ?)
 力を込めたベシャリは全編相変わらずの愛憎劇。とにもかくにもこの人のレコは Love & Hate に終始。で思うのはミリージャクソンを理解出来るのはこの時代にアメリカのブラックコミュニティに住まう人達だけじゃないかという事。「愛憎」ならば白黒黄色と、誰にだってあるだろう…が、やっぱり環境、ライフスタイルによってその形が大きく異なるように思えてならない。このアルバムがほんとに分かる日本人となると、アメリカにおいて黒人とステディな関係でもなけりゃ無理だよ、きっと。ライナーノーツ書いてるライター氏だって分かってないと思うなあ。

 録りは5カ所とあるがベースはマッスル/デトロイトのみ。他カ所は弦の被せだろう。いや、NYの Sterling Sound Mastering まで録音場所に入れているがここはその名の通りマスタリングラボ(毎度お馴染み、 George Marino による)。
 オレの好きなマッスルらしさは皆無、四人衆/ピートのクレジットはあるが特にピートはさっぱり…らしいエレキプレイはまったく聴こえず、ラスト2曲のアコギがかもしれないと感じる程度。こちらの面でも最低のブツでありました。
(030320)


#062
"Bobby Womack / Facts of Love"
[ '73 United Artist/US]
<A:★★★★★>

 久々に出た素晴らしきマッスル・アルバムがこれ。タイトなリズムをキープするフッド&ホーキンズコンビといいベケット&クレイトン・アイヴィのキーボードといい、Muscle Shoals Sound Studios 最良の音盤が残った、まさにレコードな一枚。73年という時期からしてマッスル物ベストの一枚と言えるね、これは。なんとも豊潤なマッスルの香りいっぱい、甘い…しかし甘過ぎず。

 ところでボビー・ワマックご本人はと云うとよう知らんです。あまりに有名な "It's all over now" の作者、その印税だけで一生喰えそうなお方だが、ちらっと頭をよぎるのは、この曲は Valentinos 時代の作?とか、この人ってサム・クックの愛弟子?…よう知らんですよ。知るはサウスポーの Guitarist/Singer/Songwriter ということぐらい。ストーンズとは仲良し?ロニーとだけ?…まあ何でもいいやね、とにもかくにもこのソロアルバムは GREAT の一言。
 アップ/ミディアム/バラッドと全てがイケる。ラスト3曲はお馴染み曲カヴァーで、バカラック"Look of Love"/キング&ゴフィン"Natural Man(Woman)"/ディラン"All along the watchtower"。選曲からすると同様なカヴァーを当時演っていた The Isley Brothers を想わせる、アイズリーズはホワイトマーケットでもバカ売れだったがワマックはどうだったのだろう。いや、ディラン曲はもちろんのジミヘンアレンジ(ジミヘンばりのギターは本人か?)、キングゴフィン曲はアリーサを、師匠サム・クック曲も演っているとなれば偉大なブラックパフォーマーへのトリビュート的心情なのだろう。
 自作が全11曲中3曲と少ないがその1曲Aー2"I'm through trying to prove my love to you" はアルバムベストトラック。ロッド・スチュワートに唄わせたらバッチリなスロー…いやこれは最高の自演ヴァージョンで十分だ。

 素晴らしいLPだが惜しむらくはピートの働きが今一つ小さい、ギタリストのアルバムだから仕方ないところかな…。ギターのクレジットはボビー本人/Jimmy Johnson/Pete/Dave Turner の四人。かなりの部分を本人(もしくはデイヴ某)が弾いている様子。それでも{A}としたのは "Natural Man" でのオブリが素晴らしかったから。他2曲程度しかピートは弾いていない(アコギはあるかも)がこのあまりにマッスルらしい名曲での冴えだけで十分評価できる。



#063
"Cat Stevens / IZITSO"
['77 A&M/JP]
<C:★★★>

 60年代末にポップシンガーとしてデビューらしいがオレの知るのは70年代に入ってのSSWブームの一翼を担った猫アニさん。素晴らしきメロディメイカーとして、特に『Tea for The Tillerman』『Teaser & The Firecat』の2枚が好きだったLP。その後はあまり関心持たなくなっていったが、今チャート本を見れば70年代いっぱいは英はもとより米でも随分と売れ続けたンだねェ、ゴールドディスク連発、この77年作(ちなみにタイトルは "is it so"、「でしょ?」の意)も全米7位まで上昇というヒット。

 さてどんな音なのかと一聴したその印象は Almost Bad.... 。アルバムトップがいけねぇやね、シンセの鳴り響きは間違ってエイジアをかけてしまったかと思ったヨ(持ってないけど)。後はまあまあ落ち着いたがそれでもあの2枚のようなシンプルさは影を潜め、豪華ミュージシャンをバックに配したサウンドが仰々しく聴こえた。特に2曲のインストがよく分からぬ、1曲はギリシャ系のキャットらしく彼の地の民族楽器らしき音も含むが他方はチープなスペーステクノといった風。バッククレジットに Chick Corea とあるがここに参加なのだろうか。
 それでも数度聴き返したら徐々に良くなってきた。オレにとっての重要事項、マッスル録音だがどうやらA-5 "Bonfire" B-3 "Sweet Jamaica" B-5 "Child for A Day" の3曲。但し前2曲ではピートらしいギターは聴こえず。
 A-5、曲は80年代英ネオアコっぽくかなり良い。最初期のアズテックカメラを彷彿。ここでのギターカッティングは Reggie Young か? B-3 も良い曲だがスティールの音が入るのでそれは Weldon Myrick と思える。となるとこの2曲はナッシュヴィル録音で、マッスル四人衆は出張りかもしれない。
 ジャケ裏にエンジニアとミュージシャンクレジットはあるがスタジオは無し。メンツからするとロンドン、ロス、マッスル(ナッシュヴィル?)あたりかと。バックの基本は太字になっている3人、Jean Roussel / Bruce Lynch / Andy Newmarkのようだがその他にマッスル四人衆+ピート、レジー/ウェルドンのナッシュヴィル勢、チック・コリア、エルキー・ブルックス(ロバート・パーマーと共に Vinegar Joe を組んでいたシャウト姐さんでしょ?)らがオレの知る名前、ほかにも多数あり。豪華な布陣だがアルバムとしての統一感には欠ける。全曲マッスルならば良かったのに。

 ラストB-5、ここでやっとピートのギターが。これはミディアムでなかなかの曲だ。これまたロッドが唄ってもいいかなと想ったが、そういえばロッド、『Night on the Town』でキャット曲 "First Cut is the Deepest" を唄っていたよなァ。それもマッスル録音で…。


 

#064
"Dr. Hook / Preasure & Pain"
[ '78 Capitol/US]
<B:★★>

 手堅い作りのポップカントリーアルバム、この一言に尽きる。となると後はもう趣味の域でして…、オレにはいまひとつ刺激無く…。曲はそれなりにいいンですがね。

 それにしても意外なマッスル録音盤だった。「Sylvia's Mother」「憧れのローリングストーン」等、日本ではさっぱりだったが米ではヒットを連発したこのバンドにマッスル録りがあろうとは。それも音を聴く限り全曲マッスルプレイヤーによるバックトラック、全曲のリードギターはピートとしか思えないのだ。
 ドクターフックとは、独特のしゃがれ声が魅力のヴォーカリスト=レイ・ソーヤー(トム・ソーヤーのもじり?)を中心とする7人組。裏ジャケには各メンバーの写真に担当楽器まで記されている。なのに内袋には "Musicians" として表記されているのが…
 Barry Beckett, Jimmy Johnson, Roger Hawkins, David Hood, Pete Carr, Larry Byrom, Randy McCormick, Tom Roady, Mickey Buckins, Kenneth Bell
 とマッスルオールスターズのみ。(ケン・ベルもジョニー・リヴァーズLP初めマッスル録音で何度か名を見たギタリスト、よってギターはジミー/ピート/ラリーと合わせ4人)
 録音スタジオはマッスルサウンドとお馴染みマイアミのクライテリアの二カ所。クライテリアはストリングズの被せと思われるので実質全曲マッスル録り。それも全てマッスルプレイヤーによる。となるとメンバーとされるメンツはツアーのみかもしれないなぁ。

 派手目なプレイ含めピートのギターがふんだんに聴けるが内容は今ひとつ。ただこのLPからのカットで全米トップ10ヒットとなった「めぐり逢う夜 Sharing the night together」、ここでのリード/オブリはなかなかにグッド…これがピートによるとは今の今まで知らなかったがね。
(030404)

これはちょっと気付かなかったなぁ。実は上記 Dr. HOOK アルバムからのヒット「めぐり逢う夜」だが、この曲がページ3/『Lenny Le Blanc』に収録されていた。ドクター・フック78年に対して76年のアルバムで作が Eddie Struzick/Ava Aldridge 。エディ・ストラジクはレニー・ルブランのソングライトパートナーとして、ソロ/ルグラン&カー等のアルバムに多数の曲を提供している。となるとオリジナルはこのレニー・ソロ収録ヴァージョンとみてよいだろう。いわばマッスル曲。
 で、聴き較べてみたが圧倒的に Dr. Hook version のほうが良かった。こちらを聴いてもレニーにも収録されていたと気付かなかったくらい、レニー・ヴァージョンは影が薄い。アーティストとしての資質はレニーに軍配と思うが、こと曲を魅力的に聴かせる術は別のよう。というよりもレイ・ソーヤーの歌唱力の話か。やはりヒットを連発させただけある。バックにしてもどちらもピートがギターだが、ノリが違うのだ…。

 

 


 

 

back TOP or Next