70年代半ば、CBSを辞めた Clive Davis が興した ARISTA とよく比較されたこの Casablanca。こちらはMCA(?)あがりの Neil Bogart が、同じ“ボギー”ってことで名付けたレーベル。Donna Summer と Kiss でひと儲けしたが、力いっぱいLAなレーベル、マッスルとは対極に位置しそうな。しかし珍しや、この盤にはしっかりとマッスルが絡んでいる。 ラリー・サントスなるひげオヤジ(とは言え、この76年なら今のオレより若く30前後だろう)が、タイトルとジャケでご想像通りに愛についてねちねちと歌い込んでいるブツ。それも低〜く渋い声。裏ジャケは、片手にワインボトル、逆手で女の肩を抱きながら雨の中を裸足で行く後ろ姿って…、それってジャック・ブレル、ジルベルト・ベコーか、はたまたピエール・バルゥ…、なにやらフランス吟遊詩人の体、または愛の狩人か。 なおラスト2曲のライター表記が Koster / Randazzo / Pike 、うち "Can't
get you off my mind" はデトロイト録りと思われるがフィリーっぽいアップでなかなかの佳曲。テディ・ランダッツォ曲だろう、さて書き下ろしか?カヴァーか?
4ページに入れた Jim Capaldi「Short Cut Draw Blood」で書いたように、その1曲にはこのピーター・ヤロウが参加。やはりジムアルバムと同年にマッスル録音のこの盤を出していた。セッションが被ったの見方は正解と思う。 タイトルどおりにベタな愛歌が並ぶこの盤、なにもマッスルでなくとも…とは言うまい。ジョニー・リヴァーズが言ったように
Southern Hospitality =南の温もりのなかでの録音は格別なのだろう。そこでメロウな楽曲を目一杯…それも悪くないかも。実際悪くない。ラリー・サントスと同趣向ということ。 このLPもクレジットがいい。「マッスルリズム隊の助けを借りて…」。プロデュースにベケットが入ったように10曲中3曲はヤロウ/ベケット作。バックは四人衆+ピートのみと完全マッスル仕様。裏ジャケに例の“スタジオ前でそろい踏みの四人衆写真”(6ページ参照)を大きく入れたのも他ではなかったこと。よほどお気に召したか、ヤロウは次作もマッスルで…。
******* なお上記ヤロウのアルバム数曲のバックコーラスをつけるのが Mary MacGregor なる「歌のおねえさん」。Paul Anka / Odia Coates 関係に酷似。ヤロウもマッスルまでつれて来た女性に“ごくろうさん”アルバムを作ってあげたのかも。それが…。
てなわけで、ヤロウ/ベケットのプロデュースで制作のこの1枚はメアリ・マクレガーのソロ。ワーナーからではなくてアリオラアメリカと若干マイナーですが。全曲マッスル録音でバックも同じ、たぶんヤロウ・セッションに続いての録音と想われる。 さてこの歌のおねえさん、どうにもあっさり流れてしまい引っかかりが無いのが正直辛いところ。琴線に触れずというか。キーの高いカレン・カーペンターって感じで…。裏ジャケには、[
Mary MacGregor's singing is as fresh as the air in Steamboat Springs,
Colorado, where she lives... ] な〜んて書いてある。いやまあその通りですがね、ならばコロラドで録ればよかったんじゃないの? しかしそこは“ごくろうさん”アルバムたる所以、あくまでヤロウ・アルバムの「ついで仕事」ってわけだわな。 アルバムラストがタイトルトラック、この曲には聴き覚えがあった。ポップチャートでも下位にかすったかもしれない…。
何とも滋味溢れる音像…、豊潤と言おうか…。タマリませぬヨ。圧倒的ブラックミュージック、たとえマッスルに於いてでもホワイト/イエローではどうあがいても出せないって感じするなあ。70年代のワマック、あまりに濃いブラックエキスのドリップ抽出、やりたいことをやって商売たりえた最良の頃とも想うのです。 Wayne Berry の『Home at last』を思い出させるタイトルLP、レナードスキナード曲 "Sweet Home Alabama" もマッスルのことだったが、マッスルらしくていいタイトルなこれ、クレジット買い。裏ジャケにはソングリストと Produced by Bobby Wamack and The Muscle Shoals Rhythm Section とあるのみ。76年のマッスル録音でワマックLP、まずピートの参加は間違いなかろうと踏んだが、外してしまった。内袋クレジットには [ Guitar : Charles Fullilove, Bobby Wamack, Jimmy Johnson, Eddie Hinton ] そして2曲のリードを取る Wayne Perkins となっていた。残念。それにこっちのクレジットではハリウッドも録音場所と。しかしリズム隊に Hood / Hawkins 以外の名がないのでまずロスはオーヴァーダブだけだろう。 60年代80年代のこの人を聴いていないから何とも言えないが、ここ数枚のマッスル物でのワマックはライヴでもないのに歌い出す前にひと喋りする得意のパターン。この人にはスタジオといえど“ライヴな場”だったのだろう、ついベシャリが出ちまうってな。“この歌はなぁ…”“ギターはウェインだぜ…”、ドスの効いた声で始まるのがえらくカッコいい。 Phillip Mitchell というライター名をマッスル物アルバムでよく見るが南部人だろうな、このLPでもタイトルトラックともう1曲がこの人の作で、どちらも非常に良い。お約束のサム・クックは
"A Change is gonna come" を、文句なし。そんな中でベストトラックは "A Little
Bit Salty" 、これエディ・ヒントン作。何とも黒い曲の書ける人だねぇ、そしてここでのアコギもヒントンが弾いているだろう…、最高。
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