それにしてもねぇ、繰り返すけどウェクスの女を見る目は腐ってない?(笑) いやいや、それは新人シンガーを見る目として過去に言ったこと…。このメイヴィスはぽっと出の新人とは訳が違う、過去全米1位曲も持つあの南部ゴスペルに根ざした由緒正しき(?)ステイプル家の人なんですゼ。それがよ、1曲目 "Tonight I Feel Like Dancing" はリミックスが施されたフルディスコヴァージョンだそうで。びっくりしちゃうよね〜。間違いなくあの "Respect Yourself" の声なのに、それでディスコ歌われちゃあ。いや、ディスコが悪いってことじゃないけど。オレ、ドナ・サマーやアニタ・ワードなんか大好きだし。 意外ってこと、それとマッスル産でディスコってのは…どうもなぁと。 残りはディスコ…っぽいのもあるけれどまあいわば女性ブラック・コンテムポラリィ・ミュージック。お洒落な、ね。時代の激変がこのメイヴィスをしてこう変化させてしまうとは。しかしウェクスという人はディー・ディーといい、こういうことをさせたがるタイプだったりして。オレにはとてもハマっているとは思えないだけ。 何度か聴いて分かった。この盤、マッスルとかウェクスラーとかステイプル・シンガーズとかを一切がっさい頭から抜いて聴くべし。79年の女性ブラコンアルバムとして聴くぶんにはそれほど悪くない。 (蛇足:80年代の後半にメイヴィス、プリンスのペイズリィパーク・レーベルからアルバムを出した…よなあ?)
ピートのサイトに自身のギタープレイ曲として挙げていた一曲が "Chica Boom"。でそれが
The Staple Singers となっていたから分からなかった訳だ、このアルバムのトップに収録。「ステイプルズ」と短く改名だったのね。 挙げるくらいだから自信のプレイだったのだろう、なるほどリードらしいリードを弾いている。 前後してしまいました、そのメイヴィスのソロの前年にこの改名盤。“シンガーズ”取りにどんな意味があるのかと…考えるに、たぶんウェクスラーの仕業だな。78年とはパンクもディスコも来て音楽シーンは大変革であった。この時代に即した音作りをたとえステイプル家族といえどもせねば生き残れない…ならば名称変更もやむなし(?)。 まあいろいろ言ってますが、盤としては良いですヨ、メイヴィス盤よりもずっと。ソングライターは知らない名が多くて詳細は分からないが、有名どころのカヴァーで
"Mistery Train" が。スワンプドッグ曲やら、なぜかジェフ・リン曲も演ってます。そのジェフ曲、それにトップの「チカブーム」と二曲目あたりでピートがリードらしいリードを弾いている。といってもオレのなかの“ピート節”とはちょいと違ったりするのだが。まあひさびさにピートのギターが前に出ているので甘いが「A」と付けてしまおう。ちなみに完全マッスル録音、ギターは
"Rhythm guitar: Jimmy Johnson and Eddie Hinton / Lead guitar: Pete
Carr " のクレジット。
****** イケるレコ、ジャケのショボさだけが残念。“これこそ南部ブラックレコらしいジャケやないかい”と通には言われそうだが…。
いやはや恐ろしく“ぶれ”の無いアルバムである。なにかと言えば、ジョニー・ベイラーなるおっさんの事、プロデューサーの…。この盤は完璧な「ベイラー制作」アルバムとなっている。 過去 Freddie North 盤も完全ジェリー・ウィリアムズ(スワンプドッグ)制作盤であったが、この頃の南部R&B盤の制作スタイルはこうなのだろうか、白人盤…という言い方もなんだがここで採り上げる他の盤とはえらく違うスタイルは確か。 ルーサー・イングラム、カヴァーも多い(ロッド、ミリー・ジャクスン他)南部の超名曲 "(If lovin'
you is wrong) I don't want to be right" のオリジネイターとして知られる。それにステイプルズ
"Respect Yourself" のコ・ライターもこの人だ。ただ個人的にはLP聴くのはこの盤が初めてなので他のレコの状況は分からないのだが、この盤に関してジョニー・ベイラー氏は
arrange, engineer, photography, art direction, creative direction にも名を連ねる。 ぶれの無さは音にも表れている。裏ジャケクレジットに録音場所もミュージシャン・クレジットもない。"Rhythm
Track : Muscle Shoals Sound Rhythm Section" とあるのみ。がそれだけで十分。間違いなくマッスル・スタジオでの録り、バックを務めるのは四人衆にピートのみと見た。全曲音の定位が変わらない。センターにホーキンス/フッドのリズム隊、ちょい右寄りにベケットのキーボード、右がジミー・ジョンスンの
Twangy なロー・フレット・ギター、左にピートのオブリと。 人に「ピート・カーのギターってどの盤で聴けます?」と聞かれたときには迷わずロッドの『Atlantic
Crossing』を挙げている。もし少しでも米ロック通な相手ならば『Mike Finnigan』、この2枚。
こりゃおっそろしく魅力のない楽曲が並んじまってるなあ。個人的にひっかかるモンはほぼ無しですワ。いつものミリー節=ラップがらみの愛憎劇で感情爆発というパターンがないところだけが救い、全10曲が別個に歌ものらしく並んでいるのはよいのですが。 過去採り上げ盤4枚に先がけるこの74年盤がミリーの3枚目とある。邦題は「モーニング・アフター」なんだが「ミリー」なんだかよく分からない表記のライナーは件のサクライ先生。しかし、このセンセ、なんだかいい加減。10曲中マッスル録りは2曲と書いているがどう聴いても7曲がマッスルで残り3曲がNY録音。 裏ジャケ記載は…録音がNY2ヶ所とマッスル、プロデューサーはお約束のシャピロが7曲と
Reaford Gerald なる名で3曲とある。 で、その記載だが、ゴールデンクァルテット=四人衆にピート/ジェリー・マスターズ&スティーヴ・メルトンのエンジニアと完璧マッスル仕様。だが、う〜む…<リズム:ジョンソン、リード:ピート>のギター表記ではなくて確かに Jimmy Johnson, guitar : Pete Carr, guitar だわ。その通りリードらしいプレイはいっさいなし、皆無。Aー3フィリップ・ミッチェル曲でのエレキシタール、B−2ドン・コベイ曲でのオブリにピートらしさがちらりと顔を出す程度。
この盤、ユニオンで¥800だったがジャケにシールが2枚貼り。「Rasputin's $1.95」、ラスプーチンズっていったいどこのレコ屋だ?…もちろんドルだから米に決まってますがな。ロシア系の店主? それと「Dorothye Clariett / 2215 Babette Way, Sacramento, Cal」。カリフォルニア州はサクラメントのドロシィ・クラリエットさん、なんだって売っちまったんだ、この盤を! ご丁寧にレーベル面にまでこのネームシール貼ってますがな、ドロシィさんは。このあと何人の手を経て埼玉三郷まで流れたのかねぇ。 録音に関する表記は一切なし。produced by Brad Shapiro & Dave Crawford, Rhythm arranged by Pickett / Shapiro / Crawford, strings arranged by Dave Van Depitt / Mike Lewis のみという潔さ。しかし60年代のマッスルを代表するアルバムの1枚がこの人の「ヘイ・ジュード」であったこと、それよりもやっぱりシャピロの仕込み盤ゆえマッスルよね。弦のデイヴヴァン氏はたしかデトロイトの人、なので上記ミリー盤同様に数曲はマッスル外での録りやもしれぬ。 でもって聴いてみますと。あ痛タタ…えらいノイズ盤。1曲目のタイトルトラックは明かにマッスル外、デトロイト…ではなくてメンフィスあたりでの録りかも。2曲目…こりゃマッスルらしいなあ。しかしドラムが“硬い”。マーリーン/ジーニー・グリーン盤あたりのホーキンスは硬かったような記憶、あれ何年盤だ? アルバムとしては、声は趣味じゃないけれどスロー/アップともになかなかの佳曲揃い。いい盤なのにクスラッチノイズに邪魔されて。とはいいつつ別盤を見つけても買いはしない…てなところのブツでした。
男二人に女一人編成グループ。(元)ドリカム編成とでも言おうか、いやあえてPPMまで戻っちまおうか。 ライナーによれば、各自別個活動をしていたところ、「3人寄れば文殊の知恵」?、3人を知るミリー・ジャクソンがおのおのに声かけて…“この際3人で組んだらどーよ”と。ならばやってみっぺとうなずき合う3人、手打ちの後にミリーはプロデューサー&マネージャーを約束、と。 そんなグループのアルバムはリミーの仕込みということで後ろ盾シャピロの力も借りまして。Kayvette Records というのはそのシャピロが所有するレーベルとのこと。ディストリビューションは TK Productions というフロリダの会社に任せている。録音もリズム録りはマッスルでストリングス/ホーン、それに歌入れはマイアミのクライテリアというお馴染みのパターン。典型的アラバマ=フロリダ・ライン制作盤。 その内容のほうもある種お馴染みパターンか、バンクス=ハンプトン、ジャクソン=ムーア、フレデリック・ナイトなど南部R&Bライター曲を歌い上げ。「く〜!こりゃタマらぬ!」という曲はないのだが平均すれば高得点。アップにスローに佳曲多し。個人的ベストはやはりバンクス/ハンプトンの実力か、"Caught
in the Act (of Getting it on)" というナンバー。ラストのスロー曲 "Love is the
final Truth" はこのグループのオハコ/代表曲だろうな。薄いがいいオブリをピートが弾くナンバー、これも捨てがたい。 ギターは、う〜む…悩むところだなあ。ピートっぽいところもあり、ちゃうなってところも。で、ピート/ジミー・ジョンソンにもうひとりと推測。かなりいいギタープレイが聴ける盤ではある。
翌年の二枚目がこちら。ジャケがやけに「あか抜け」ました。一年でこの変化はちょっとビックリ。グループ名に "The" が付いたのも違い。(といっても1曲目 "Did he make love to you?"、Aー4 "Do you wanna make love?" …やはり基本はメイクラブなブラックワールド?) 内容も一気にソフィスティケイト。バックトラック/マッスル、ストリングス&ホーン/クライテリアは前作ままなれど歌入れはNYの
Media Sound となっている。そこらも要因か。それとソングライターがすっかり変わっている。ほとんど知らない顔なので違うかもしれないが、著作権管理でみる限り南部曲は一掃されて都会モードになったみたい。
Don Kirshner Music, Almo Music など。ラスト曲 "Dr. Feelgood" はご存知 Screen
Gems、Bゴールドバーグ/Gゴフィンという "It's not the spotlight" コンビによる楽曲。 1曲目のブラッキーなメイクラブワールドがなんだかねえ、敗因のひとつかもなあ。これを“売り”にするならば全編ディープにゆくべきなのに残り曲はやけに他人行儀だし。 この6分近い曲、どうやら別れそうで別れていない男女のトラブル話。女がほかの男どデートしたのを男がねちねちつつくうちに痴話喧嘩、その仲裁にミリーが入り込んでくるという、まあお約束みたいなミリー・ジャクソン関係盤らしさ。やはりオレにはこの手は…腰が退けます。 曲が曲なのでバックも大人しい。NY録音のよう、マッスルらしさはほぼ無し。ギターも同様。
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