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D's Talk alone_05

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1973

•Gerry Goffin【It ain't exactly entertainment】

 (demo take appeared on CD_2010)

•Ted Neeley【1974 A. D.】

•Bobby Blue Bland【His California album】

•ST 4_ 7 " single only

 

1974

•Barry Goldberg【Barry Goldberg】

 (remix take appeared on CD_2009)

•Electric Flag (outtake_ appeared on CD 2000)

•Tradewinds_ 7 " single only

•Funk, Inc.【Priced to sell】

 

1975

•Rod Stewart【Atlantic Crossing】

 (alternate take appeared on CD_2009)

 

1976

•Kim Carnes【Sailin' 】

•浅川マキ【灯ともし頃】

1977

•金子マリ&バックスバニー【LIVE - We Got To】

•Freddie North【Floatin' 】

 

1978

•The Manhattan Transfer【Pastiche】

•浅川マキ【浅川マキ・ライヴ・夜】

 

1999

•Beth Orton【Stir of Echoes】

 

2000

•Andrew Strong【Out Of Time】

 

2012

カルメン・マキ【From the Bottom】

barryGoldbergLP翌74年盤。まずはライター片割れ…ゴールドバーグが、やはりマッスルショールズでソロを録り、そこで披露している。ディランとジェリー・ウェクスラーのプロデュース名義盤。スタジオはマッスルスタジオ。ゴフィンのテイクと違い、こちらはベケット/ホーキンス/フッド/ジョンソンの四人衆がバック。アリフ・マーディンの弦も加わり、女声コーラスも…とにかく音数が多すぎてゴールドバーグはすっかり霞んでしまった。オリジネイターにしてこの出来は辛い。が、さすがに本人も格上連中にかき回された感をずっと持っていた様子。09年のCD化に際して自身の手でミックスをやり直している。ヴォーカルをぐっと前に出して、うるさかったコーラスを消去、俄然良くなった!

同74年のこと、ゴールドバーグはバンドとしてもLPを制作している。マイク・ブルームフィールドと組んで結成した The Electric Flag を再結成させ、ジェリー・ウェクスラーのプロデュースによる【The band kept playing】を、マイアミはクライテリア・スタジオで作った。そのセッションのなかで《it's not the spotlight》も録音していた。それは上記のように、ソロでの失敗が尾を引いていたからだろう、再挑戦であったことは明白。しかし自らでなく、バディ・マイルスにヴォーカルを取らせたテイクは…かなりゆったりとアレンジ、まろやかなホーンの絡みといい、バックは悪くないのだが、フェイク気味なヴォーカルがいまいちしっくりこない。誰もがそう感じたのかどうか…結局アルバム収録は見送られた。しかし10年ほど前から当時のセッションアウトテイクがいくつも廉価CD化され、中で表出している。

 

tradewinds7
ここまでのカヴァーはおぼろげにも〝つながり〟を感じさせるテイクだったが、74年という早い時期にニューヨークで録音されたテイクは突出感ありあり、不思議なシングル。まずほとんど無名のグループであること。黒人グループであったこと。ただ、レーベルが Avco / Embassy なのでNYティンパンアレイと無関係でなさそう…唯一の接点。

The Tradewinds というコーラスグループによるシングル・オンリーだったらしい(トレイドウィンズというグループはいくつも存在したし、アンダース&ポンシアのそれとは無関係)。ヒューゴ&ルイージのレーベルからで、いかにもNYブラック・コーラス・グループ然としている。摩天楼を突き抜けるようなファルセットと甘いストリングスは〝甘茶ソウル〟好きにはたまらないかも。都会のテイクとしてこれは断然アリ! 素晴らしい。ヴァン・マッコイの仕事かとも思ったがレーベルのクレジットは:

produced by Lou Courtney for Cashwest Productions, Inc. arranged by L. Leon Pendarvis

レオン・ペンダーヴィスの名前はロック/ソウル盤のいくつかで見た。ルー・コートニィの方、ネットで見ると一時期はフィフス・ディメンションのメンバーだったとある御仁。

 

funkIncやはり74年のこと、こちらはジャズがかったカヴァー?… Prestige レーベルからの1枚、アルバム収録曲の中にカヴァーあり。当時流行りの "Jazz Funk" というヤツなのかどうか…いまひとつよく分からないが、Funk, Inc. という黒人バンド盤【Priced to sell】収録。アレンジの観点からするともっとも〝アレンジされた〟テイクがこれ。メロウでソフィスティケイトされていて、メロディも…一瞬別曲かと思わせるフェイク/アレンジなのだ。ここまで違うと逆に面白い。西海岸バークレイでの録音らしい。ギター、ここでもヴォリューム奏法らしい音があるのは意外な共通項(ヒントンやバックスバニーのテイクに似る)。

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73年のこと、ジェリー・ゴフィンはメリーランド州のマイナーレーベル Adelphi Records から2枚組LPを出す_【it ain't exactly entertainment】。否定&否定でありました、『これはまったくもってエンタテインメントなんかじゃない』というタイトル盤に収録した『それはスポットライトなんかじゃないんだよ』という楽曲。

ご存じキング&ゴフィン。New York はブリルビディングにてアル・ネヴィンズ/ドン・カーシュナーに叱咤激励されながら、マン&ワイル、バリー&グリニッチらと競いあってポップ・ヒット曲を作り上げることに血道を上げたオシドリ夫婦チーム。その後に別れた妻キャロル・キングのSSWとしての大ブレイクもあったから、いまではティンパンアレイ・ソングライターチームとしては最も大きく残ったチーム名でしょう。その一人のゴフィンがこういうタイトルでマイナーからひっそり() と出したアルバムは、一般受けよりもコアなファンのみにすくい上げられたというべきか…一部で絶賛された。その中にこの収録曲…「これこそがエンタテインメント」という世界でしのぎを削った身から出た言葉だからこそ〝本当の歌〟_〝真実の光〟を見た歌い手が多かったのかもしれない。

ゴフィンは作詞家。となると曲はゴールドバーグということですか。彼に対する個人的な印象は、常にアル・クーパーの後ろにいた人…。いったいゴールドバーグとゴフィンはどこで接点があって共作することになったのだろう。どうもディランが…そんな気がしてならない。ゴールドバーグとディランは旧知だろうがゴフィンはどうだったか。そこは分からないが、ただディランが間に入っていたのではないかと漠然と感じる…。

以下、現在まで集めたテイクを紹介していこう。

 

goffinLP端の紹介は「オリジナルテイク」、72年末の録音。ゴフィンはアラバマ州マッスルショールズの地で2枚組アルバムを作った。スタジオは Muscle Shoals Sound Studios と FAME studios 。MSSS に関しては拙稿を参照してほしい。以下「マッスルスタジオ」と呼ぶことにするが、ゴフィンの録音ではオーナー「四人衆」はバックを努めていない。キーボードがゴールドバーグ、ポール・ホーンズビィ、クレイトン・アイヴィ/エンジニアのジェリー・マスターズがベースも担当/ギターはピート・カーとエディ・ヒントン。

goffin7
ディランに近い声と歌い方、上手くはないが朴訥な語り口ともいえそうなテイクはさすがにオリジネイターか、染み入る名唱。ヒントンのギター、ストラトだろうヴォリューム奏法(→Talk Session #14_永井充男)が素晴らしいアクセントになっている。

最近になってこのアルバムのデモセッションCDが出てその中に、この曲のヴォーカル別テイクが収録されていた。音はいまひとつだが朴訥という意味ではこちらのテイクの方が味がある。

 

73年に2枚のアルバムに収録されたのが最も早いカヴァーテイク。ゴフィンLPの発売と同年とは驚く。その2枚はともにロサンゼルス録音。南部マッスルの地からいかにして西海岸へ伝播したか。キー・パーソンはマイケル・オマーティアン。両盤で共通するクレジット : arranged & conducted by Michael O'Martian

想像だが…オマーティアン前にルー・アドラーが噛んでいたんじゃないだろうか。同じティンパンアレイの釜の飯を食った仲間としてアドラーは、ゴフィンがソロを録音してすぐ、もしくはデモの段階から聴いていたと思う。なかでとびきり光る1曲に注目し、これをより広めたい気持ちになったのでは。で、西海岸のシーンでは売れっ子アレンジャーだったオマーティアンに聴かせたんじゃないかな。その楽曲をセッション毎に持っていった結果がこの2枚…という「作り話」はどう?^^

 

bobbBlandLP1枚はR&Bシーンでのビッグネーム、ボビー・ブルー・ブランド。もう1枚がテッド・ニーリー盤。後者、音楽シーンでは馴染みのない名前だが、大ヒットロックミュージカル『ジーザス・クライスト・スーパースター』で主役を務めた男といえば通りはいいだろう。ブランド盤のドラムがエド・グリーン、ニーリー盤ではジム・ゴードンが叩く。どちらでもギターを弾いているのは(本当に、何枚セッション参加盤があるやら…)ディーン・パークス。

しかし Steve Barri プロデュースでハリウッド録音のボビー・ブランドてのはどうなんだろう。手堅いバックに乗ってそつなく歌っている、熱が感じられない。声を上げる箇所もあるがどこか無理しているように感じるのはワタシだけか…。

tedNeeleyLPテッド・ニーリーのほうは俄然熱を帯びている。コーラス三声も自身で重ねていて声が出ているのは舞台俳優らしいところだが、ちょいと待て…この歌詞に歌い上げはどうよ? 感もあり。ただバックトラックが見事なんでね、個人的にはかなりオキニな仕上がり。ベン・ベネイとディーン・パークスのダブルのギター良し/それと跳ね上がり気味のゴードンのスネアワークがなんとも好きで…。

 

実はここまでは前から知るところだったが、極々最近になって判明したシングルがあったこと、それがやはり73年であったことを記しておく。もしやこれがオリジナル? とも感じさせる希少盤、うまいことネットで見つけられた。西海岸のディーラーから送られてきたシングルは "ST 4" という名義。これがグループなのか何なのか実態が知れなかったが、便利な時代ですな…ネットから知ることができた。NYはロング・アイランドのローカルバンドで結局大成することなく終わった、星の数ほどあるロックバンドのひとつだった。苦心の末NYの名門セプター・レコードと契約したが出せたのはシングル2枚のみらしい。そのセカンドシングルがこの曲。買った盤はモノ/ステレオ・テイクがAB面のプロモ・シングル。ラベルにはこうある:

ST47
arr. and cond. by Alan Lorber prod. by Eddie Jason for Lovejan music, inc.

このアラン・ローバーという名前をチェックしてみると、スペクター/レイバー&ストーラー/ネヴィンズ&カーシュナーなど錚々たるティンパンの大物と仕事をして来たとあることから、ゴフィンのデモを聴くことができる位置にいたと思えるのだ。ただし出来はいまひとつ。いわゆる「トップ40バンド」=ローカルなハコバンなんですな、言われるままにやりました…という仕上がり。