前出『Rings』は2枚目、こちらのセイムタイトル盤がデビューらしいルーベン兄。プロデュースは前作同様…ではなくてこちらが先。ピートの参加盤ではあるが2枚ともマッスルスタジオ/四人衆が絡まないところのマッスル録音盤。 さて「リング」では“アルバム中に占めるカントリー調曲はつまらないが…”と書いたが、こちらファーストはその類でほぼ占められてます。正直こりゃかなわんわい、と。その反省からセカンドでは曲にバリエイションをつけたのかもしれない。 ギターはピートとケン・ベル。しかしピートかケンかと問う前にほとんどギターが、エレキもアコも聴こえないンだよね。これまたちょっとないだろとグチりたくなる盤でした。
これはちと奇妙な手触りのマッスル盤。R&Bからカントリーまでなんでもありのマッスル録音なのだが、つまりはアメリカ音楽の坩堝。なのにこのゲイリー・ファーなる兄さんからは出自たる英国の匂い/トラッドな音を感じる。英国といえばアイランド関係という繋がりは確かにあるマッスルとはいえ、その関係英国ミュージシャンらは米国音楽フリークであった。このファーから、ディランを感じなくもないが音として米国はあまり感じないのだった。 ここでひとつ、疑問が確信に変わりつつある。George Terry はマイアミは Criteria Studio
付きのギタリストであろう事。この盤、録音はマッスルだがミックスはクライテリア。ミキシングエンジニアが Karl Richardson / Albhy
Galuten 。過去ジョージ・テリーがギター参加したアルバム『Barry Goldberg』『Barbra Streisand/Guilty』と共にガルティンが絡んでいる。リチャードスンとガルティンはクライテリアのエンジニア兼プロディーサー。クライテリアで録った『461
Ocean Boulevard』以降クラプトンバンドに加わったジョージ・テリー…つまりはテリーはガルティンと行動を共にしていたクライテリアのギタリストなのだろう、と。
この盤、77年日本テイチク盤を買った。オリジナルは70年米 Mankind 201 盤でタイトルも『Brand New Z. Z.』であったと、ミリー盤と同じくサクライさんのライナーにある。76年に英で Contempo レーベル盤が同内容ながらタイトルを上記に変えて発売、テイチクはその英盤のライセンスで出したためにレーベルも Contempo のデザインとなっている。 …ということで Mankind とくれば即出てくるのは名盤フレディ・ノースの『Friend』(see page-07)。こちらが Mankind 204 だから番号も近いZZ盤、のみならず内容も酷似… Jerry Williams Jr. によるプロデュース盤であった。 そのジェリー・ウィリアムズこそ Swamp Dogg であると板で教えていただいた。つまりはこれもフレディ盤もスワンプ・ドッグ仕切りによる
Quinvy Studio 制作。ドッグ自身のアルバム含めスワンプ・ドッグ・セッションに欠かせないギタリストが Jesse Carr、つまりは若き日のピートという次第。でこのZZ盤でも全編ギターはピートが弾いている。ちなみにパーソネルは: フレディ盤との比較、ことギターに関してはフレディ盤ほど前に出てきていないのが残念。それとこの時期、いわば初期のピートだが全盛時とは音色/フレーズともかなり異なるので別枠にしておくのが賢明、それでも硬質で手堅いサウンドはそれなりに聴く価値があるのだ。 四つ星はちょいと甘いなぁ、けれどスロー/アップの楽曲はイケるほうなので…。 聴いていて上田正樹を強く感じた。声自体も酷似だし曲調も。South
To South ってバンド時代、かなりここらの盤をお手本にしていたんだなあと強く思った次第。ベースからギターからすごく近いもんがある。ギターはピート(ジェシ)なのだから、サウスのギタリストの“クンチョウ”とピートがつながるとは今の今まで思っていなかった。特にLPラスト曲
"I think I'd do it" はもろサウス…。いや逆ですが。
いやあ70年代のワマック、たまらなくカッコいいねぇ。駄作がない。とにかくAー1曲がどうしようもなくカッコよくて。ポール・ウェラー、スタカンはこういうことがやりたかったんだろうなあ。しかし黒人独自の“地肩の強さ”にはかなわないって感じ。 とにかく1曲目の怒涛の押し、マッスルリズム隊のソリッドな音のキレが素晴らしいので後はどうなるかとワクワクしながら聴き続けると…ちょっとね、もちろん悪いはずはない御仁ですよ、でもちょっと肩すかし。カヴァーがやっぱり2曲。毎回その程度にホワイトなカヴァーが入るのは営業的になのでしょうか。そこら辺アイズリーズにも似て。"Natural
Woman" のようにキマったカヴァーもあったが他はどうもハズしがち…ちょい気になるところ。今回はB4"And I Love
Her" 、ニール・ダイアモンド "Sweet Caroline" 。どっちもなんか違う。
無理のない歌い方で大好きなシンガーのひとりがこのジョニー・リヴァーズ。“アメリカ”のシンガー…と個人的には強く感じる人。のっけものっけ、このサイトのファーストチョイスがこの人の『Borrowed
Time』だった。全編マッスル録音だったがピートの不参加が残念と書いた盤。で、この盤には参加とAMGにあったのでかなり期待を持っていたのだが…。全10曲中マッスルセッション曲はわずか2曲、残りはナッシュヴィルセッション。 始めに2曲のマッスル曲をやっつけてしまうが、1曲はあの名曲 "Sitting in Limbo" のカヴァー。Milt Holland が steel drum を叩いていて(これもロスで被せだろう)、ホーキンスのグロッケンやベケットのエレピがなかなかいい味を出している。のに、Jimmy Webb のストリングスが余計。せっかくの“小粋さ”が台無しだわさ。もう1曲、ラストの "Breath" はいかにもラスト用に作りましたという歌い上げ楽曲ながら結構気に入った。ちらっとリード/オブリに聴けるギターだがこれほんとにピート? ピッキングアタック音を消したヴォリュームペダルでのプレイのようだが、ピートとしたら他では聴いた記憶ない…。 残りナッシュヴィル曲がいい。ジム・ウェッブのスロー曲からアップナムバー "Six days on
the road" のカヴァーまで曲の粒も良いがなんといってもこの人の声が良いのだ。それとギタリスト=レジー・ヤングの活躍。前ワマック盤では地元のメンフィスセッションなので参加だったレジーだが、出張りも多い人でマッスルへもナッシュヴィルへもギター1本で馳せ参じてくる。ここではナッシュヴィルらしいカントリーリックを披露。ジェイムス・バートンばりかね、このプレイは。
ハッピーサック・プロダクションのブライアン・エイハーンがプロデュース。エイハーンといって何思う? やっぱエミルーでしょ。エミルー・ハリスのプロデュースでのエイハーン、それはロスでの録りだったが Amos Garrett がいいギターを弾いていた。やはりエイハーン・プロデュースでの Rodney Crowell 盤にもエイモスが。ようはエイハーン仕込み盤にからむエイモス、それがここでも言える。この盤にもエイモス参加。 で、これもロスでの録りかと思いきや…全十曲うち四曲はマッスルサウンドでの録りなのだ。六曲は "The Enactron Truck" とあるのみ、スタジオ名だろうしここはロスと想像するが。Bill Payne, Waddy Wachtel らの名からしても。 過去にウッドストックとマッスルの見事な融合とした傑作が『Mike Finnigan』(02 page)。このディアンヌ盤はこれに近いのがまず不思議。ウッドストック一派のジェシ・ウィンチェスター曲を採り上げていたフィニガンに対しこちらはボビー・チャールズの
"Small Town Talk" を。これがマッスルでの録音でギターがエイモスというのだからたまらない。フィニガン盤でのエイモス/マリア・マルダーの参加はマッスルへ出張り参加ではなくNYでの重ねではないかと書いたが、どうもこちらは完璧なセッション、エイモスのマッスル出張りに感じられる。 不思議な感じといえば、個人的かもしれないが非常に白人に寄った(?…カントリー色濃いエミー・ルーのためにそう感じる)エイハーンがこの黒人シンガーをプロデュースすること自体に強く感じたりもする。そしてロス録音では非常にブラック色の濃いセッションという点も。数曲は
James Gadson / Willie Weeks という強力リズム隊。 ギャドスン/ウィークスの強力リズム隊が四曲、フッド/ホーキンスのマッスルリズム隊が四曲と星を分けたグレイトなサポートにエイモスのいいギター、となれば満点五つ星をつけたいところ。しかしここが一番大事なところだった、本人ディアンヌ嬢が…オレにはいまひとつ。なにしろ声にそれほどの特徴がない。前に
Dee Dee Bridgewater で書いたような、たぶんゴスペルなバックグラウンドだろう、「声量には文句ないんだけど…」組のひとり。(声が出ればすべてゴスペルでくくってるオレもどうかと思うが…)
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